元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「限りなく透明に近いブルー」

2019-10-11 06:39:05 | 映画の感想(か行)
 79年作品。作家の村上龍には5本の監督作があるが、概ね評論家筋にはウケが悪く興行的にも低評価である。そのせいか、96年製作の「KYOKO」のあとは映画を撮っていない。ただし本作はその中でも一番マシな出来だと、個人的には思う。原作は村上のデビュー作で第75回の芥川賞受賞作だが、私は未読。ただし大まかなストーリーは知っている。

 作者の分身である、米軍基地の近くに住むリュウという青年が、麻薬とセックスにドップリと漬かった生活から、周囲の人間達との交流によって立ち直る(?)過程を描いている。まあ、話自体は取り立てて捻ったところはなく平易に進むのだが、個々の描写には見るべきものがある。



 特に興味深かったのが、黒人兵達との乱交パーティーの場面だ。黒人兵が日本人女性と絡むシーンで、これまでの映画ではあまりお目にかかれないような、黒人と東洋人との肌のキメの違いまでジリジリと出している演出には、少なからず驚いた。また、主人公が森の中で女友達のリリーと絡み合うシークエンスも、とてもキレイだ。赤川修也によるカメラが効果的に機能している。

 村上の仕事ぶりは冗漫な印象もあるが、異業種からの参入でしかも第一作であることを勘案すると、及第点であろう。星勝による音楽および既成曲の使い方も万全だ。主演の三田村邦彦は好演。リュウの屈折した内面を繊細なタッチで表現する。ヒロインに扮した中山麻理も、捨て鉢でありながら放ってはおけない存在感を醸し出していて好感触。なお、この2人は本作での共演が切っ掛けで交際がスタートし、翌80年には結婚にまで漕ぎ着けている(後に離婚 ^^;)。平田満や中村晃子、斉藤晴彦といった脇の面子も悪くない。

 この映画が地方で封切られたとき、同時上映はジャマイカ映画の「ハーダー・ゼイ・カム」(72年)だったらしい。まったく毛色の違う二本立てだが(そもそも、製作国が違う)、無軌道な若者が主人公である点だけは共通していると言える(笑)。昔はそういった“異色の抱き合わせ上映”というのが珍しくなかった。シネコン全盛の現在では考えられないことだ。

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