元・副会長のCinema Days

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「サン・スーシの女」

2020-07-03 06:05:03 | 映画の感想(さ行)
 (原題:La Passante du Sans-Souci )82年作品。若くして世を去ったロミー・シュナイダーの遺作というだけでも感慨深いが、内容も悲痛で観ていて胸に迫るものがある。また演出も脚本も巧みで、主演女優の魅力を存分に発揮させている点は評価して良いし、見応えがある。

 1981年、国際会議に出席するためパリを訪れていた人権活動家のマックス・ボームスタインは、パラグアイ大使のルパート・フォン・レガートを突然射殺する。妻のニナは留置場でマックスと面会するが、彼はかつてのルパートとの関係を語るのだった。1933年のベルリン、父親をナチスに殺された10歳のマックスは、父の友人で歌手のエルザとミシェルの夫婦に引き取られる。



 ミシェルは反ナチ派の出版社の経営者で、やがて彼は当局側に拘束される。一人になったエルザに言い寄ったのがナチスの幹部ルパートだった。エルザはミシェルを釈放することを条件にルパートと付き合うことにする。拘束を解かれたミシェルとエルザは亡命者たちが集まるカフェ“サン・スーシ”に向かうが、そこで悲劇が起こる。ジョゼフ・ケッセルによる同名小説の映画化だ。

 シュナイダーの活躍の場は主にフランスであったが、実はドイツ出身だ。その遺作がドイツの現代史に暗い影を落とすナチスがらみであったことに、彼女ならではの存在を感じる。しかも過去のこととして決着をつけるのではなく、今もナチスの呪縛から逃れられないヨーロッパの状況とリンクさせたところに、この作品の存在価値がある。

 本作ではシュナイダーはニナとエルザの二役を演じているが、時代は違っても実質的に同一の女であることを感じさせて、このあたりのシナリオのは上手い。しかも、エルザとリナは双方ともその時代の犠牲者となるのだが、いつしかその運命がロミー・シュナイダーその人の不遇な晩年とも重ね合い、観ていて居たたまれない気持ちになる。

 監督ジャック・ルーフィオは、めまぐるしいモンタージュで2人の女を二重写しにするが、このあたりのケレンが鼻につくことも無く、スムーズに流れるのには感心するしかない。ミシェル・ピッコリにヘルムート・グリーム、ジェラール・クライン、マチュー・カリエール、マリア・シェルといったキャスティングに抜かりは無く、皆良いパフォーマンスを披露している。重厚な映像を創出するジャン・パンゼルのカメラと、流麗なジョルジュ・ドルリューの音楽も印象的だ。

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