元・副会長のCinema Days

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「ランサム 非公式作戦」

2024-10-05 06:30:11 | 映画の感想(ら行)
 (英題:RANSOMED)先日観た「ソウルの春」では韓国映画のパワーを実感したが、本作のヴォルテージはそれを上回る。少なくとも、娯楽映画としては「ソウルの春」よりも優れていると言えよう。こういうシャシンは今の日本ではまず作れないし、ひょっとしたらハリウッドでも難しいかもしれない。とにかく、130分あまりの尺を一時もダレることなく楽しませてくれる。

 75年から90年にかけて断続的に発生したレバノン内戦。その間に首都ベイルートで韓国人外交官が行方不明になる。それから数年後、現任の外交官イ・ミンジュンは、その消えた外交官が武装組織に拉致されており、人質として生きているという情報を掴む。外交部長官の密命により、身代金を持って単身ベイルートへと出向いたミンジュンだったが、早速大金を狙ったギャングに襲われる。



 そこで偶然彼を救ったのが、韓国人のタクシー運転手キム・パンスだった。帰国のビザを出すことを条件にミンジュンに協力を持ち掛けたパンスと、渋々ながら行動を共にすることになったミンジュンは、極限状態にあるベイルートを人質奪還のために突き進んでいく。

 まず、キャラクターが良い。深夜うっかり人質からの電話を受けてしまったばかりに単身ヘヴィな場所に派遣されるハメになった小市民的ヒラ官僚のミンジュンと、成り行きでレバノンから出られなくなってタクシー運転手として糊口を凌いでいるパンスとのコンビは、まさに絶妙。スムーズに連帯感を醸し出せるはずもなく、隙あらばスタンドプレイに走る。ただ、こうした疑心暗鬼の果てに本物の仲間意識のようなものが形成されるという、そのプロセスの見事なこと。

 現地の武装組織も一枚岩では無く、金を横取りしようとする軍の連中も加わって、まさに仁義なき戦いが全面展開。さらには韓国側では外交部と安企部との確執が繰り広げられ、ブローカー役を買って出るスイス在住の黒幕みたいな奴まで出てきて、先の読めない群像劇が繰り広げられる。主人公2人が遭遇するトラブルは、いずれも絶体絶命のレベル。それが息もつかせず手を変え品を変えて畳み掛けてくるのだから、もう退屈するヒマも無い。

 キム・ソンフンの演出は強靱で、活劇シーンでは一点の緩みも見せず観る者を引き込んでゆく。そして終盤での思いがけない筋書きには、感心するしかない。主演のハ・ジョンウとチュ・ジフンは絶好調。身体のキレも表情の豊かさも及第点以上に達している。バーン・ゴードンやマルチン・ドロチンスキ、ニスリン・アダム、フェド・ベンシェムシなど他のキャストも存在感が強い。さて、直近のニュースではイスラエル軍がレバノンを空爆し、多数の犠牲者が出たことが報じられていた。この地域では、戦火が途絶えることは無いのだろう。だが、それでも平和を望まずにはいられない。

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