元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「キャラメル」

2009-06-05 06:28:10 | 映画の感想(か行)

 (英題:Caramel )どうにも居心地が悪い。これは、散りばめられたエピソードがどれも完結せず、空中分解したまま放置されたことによる。もちろん、結末を付けないこと自体が悪いというのではない。明確なエンディングを迎えなくても、観客に対する訴求力の大きい映画は作れる。しかし本作は物語を途中で放り出したとしか思えない。こんな体たらくではとても評価できない。

 レバノンの首都ベイルートを舞台にした女たちのドラマ。とあるエステサロン(美容院)の従業員や常連客、近所の住人など5人の女たちが主人公。彼女たちはいずれも悩みを抱え、次なる一歩になかなか踏み出せないでいる。その屈託の描出は申し分ない。観ていて身につまされるシーンもある。

 タイトルの『キャラメル』とは砂糖を煮詰めて作る例の甘い菓子のことだが、当地では出来たばかりで軟らかいキャラメルを脱毛ワックス代わりに使うらしい。これは実に痛いと思うのだが(爆)、その“甘いけど痛い”という素材を登場人物達の甘辛い人生のメタファーとして機能させようとしている。これは良いと思う。

 しかし、前述のように彼女たちが何をどのようにして内面で決着を付け、最後はああいう行動に走ったのか、まったく述べられていない。明示どころか暗示もなし。これで作劇を組み立てたと言えるのか。さらに、ビデオ上映であったことが大いに萎えた。しかも、この画質の荒さは断じてブルーレイディスクなどの高精細フォーマットではなくDVDレベルである。こんなのを金取って上映する神経が分からない。いずれにしろ作品の低調ぶりを象徴していたと言えよう。

 あまりケナすのも何なので褒める点を二つあげたい。一つはレバノンの文化と風俗。地中海沿いの小国だがイスラエルと南で国境を接しており、昔から紛争が絶えない。民族的にはアラブ系のはずだが、キリスト教徒が3割以上いるらしく、劇中でもそれが示されていた。そしてフランス領になったこともあるのでフランス語が日常会話の端々に現れる。普段なじみのない国だけに、大いに興味深かった。

 二つ目は監督・脚本のナディーン・ラバキーだ。若手の女流で、映画の中でも不倫に走るエステサロンのオーナーに扮しているのだが、これが凄い美人なのである。もちろん、普段は女優でたまにメガホンを取るといったスタンスではなく、監督が本業(長編はこれが初めて)。おそらくは現役の女流映画監督の中では世界一ルックスが良いと思う。・・・・というか、本作の出来からして、今後は監督よりも演技者としての仕事を増やした方がいいのではないだろうか。

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