元・副会長のCinema Days

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「レッド・ドラゴン」

2019-11-24 06:26:21 | 映画の感想(ら行)
 (原題:Red Dragon)2002年作品。ジョナサン・デミ監督「羊たちの沈黙」(91年)よりも以前のエピソードを描く“レクター博士三部作”の一作目。リドリー・スコット監督の「ハンニバル」(2001年)も含めたハンニバル・レクター・シリーズの中では、一番楽しめる。トマス・ハリスによる原作の第一回目の映画化であるマイケル・マン監督の快作「刑事グラハム 凍りついた欲望」(86年)にも匹敵する出来だ。

 元FBI捜査官のウィル・グレアは、元上司ジャック・クロフォードから満月の夜に発生した一家惨殺事件の捜査を依頼される。期間限定で現場へ復帰したグラハムだったが、なかなか糸口が掴めない。そこでかつて自分が逮捕した天才的な連続殺人鬼“人食いハンニバル”ことレクター博士に助言を求める。一方、古びた屋敷に一人で住むフランシス・ダラハイドは、自らの不遇な生い立ちを克服するため、超人願望に憑りつかれていた。



 私は世評の高い「羊たちの沈黙」を全然評価しておらず、単に奇をてらったB級映画としか思っていない。「ハンニバル」に至ってはイタリアの観光映画でしかないと断言する。対してこの作品はハンニバル・レクターの存在を“事件関係者の一人”という次元から一歩も逸脱させない。あくまでもメインはエドワード・ノートン扮する捜査官とレイフ・ファインズの異常犯罪者との争いである。

 そういうサスペンス映画の王道に徹しようとしているところが実に心地よい。もっとも、マイケル・マンによる前回の映画化もそういうテイストが前面に出ていたので、これは原作の手柄だと言ってもいいだろう。監督は「ラッシュ・アワー」のブレット・ラトナーだが、メリハリを付けた手堅い仕事ぶりで、予想以上の健闘を見せている。また、ラストの処理も気が利いている。

 主演の2人をはじめハーヴェイ・カイテル、メアリー・ルイーズ・パーカー、フィリップ・シーモア・ホフマンなど、キャスト面はいずれも良好。特に盲目の女を演じたエミリー・ワトソンは儲け役で、ファインズとのぎこちないラヴシーンは絶品だった。ダンテ・スピノッティのカメラによる奥行きの深い映像、ダニー・エルフマンの音楽も要注目だ。

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