元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ラスト・ムービースター」

2019-11-25 06:39:18 | 映画の感想(ら行)
 (原題:THE LAST MOVIE STAR )バート・レイノルズの全盛期を少しでも知っている映画ファンならば、感慨深いものになること必至だ。しかも、先日観たロバート・レッドフォード主演の「さらば愛しきアウトロー」がレッドフォードに馴染みの無い観客は“お呼びでない”といった内容だったのに対し、本作はたとえレイノルズの映画を観たことが無くても、その良さは伝わってくる。鑑賞する価値のある佳編だ。

 かつて一世を風靡したアクションスターだったヴィック・エドワーズは、老いた今ではロス郊外の自宅で一人暮らしだ。ある日、ヴィックは国際ナッシュビル映画祭とかいう聞き慣れないイベントの招待状を受け取る。その映画祭では彼に功労賞を渡すらしく、過去にはロバート・デ・ニーロやクリント・イーストウッドも賞を受け取っているという。



 取り敢えずその映画祭に参加したヴィックだったが、国際映画祭とは名ばかりの小汚い居酒屋での映画鑑賞会だったことを知り憤慨。途中で帰ろうとするが、偶然そこは彼が生まれ育ったノックスビルの近くだった。ヴィックの胸に、青春時代や最初の妻と出会った頃の思い出が去来する。

 2018年に世を去ったレイノルズの遺作だが、主人公ヴィックは彼自身を投影している。また、劇中でヴィックがレイノルズの若い頃の諸作の中で“共演”を果たす場面があるが、ヴィック(レイノルズ自身)のそれまでの俳優人生を振り返る意味で、実に効果的だ。

 レイノルズはデ・ニーロやイーストウッドのようなレベル(主要アワードの常連)に達することは出来なかった。しかし、アクションスターに徹して観客を楽しませた実績はとても大きなものだ。たとえ片田舎のマイナーな映画祭だろうが、熱心なファンに囲まれることによって、彼は自らのコンプレックスを克服しキャリアをポジティヴに振り返ることが出来た。終盤で彼がつぶやく“人生、これからだ”というフレーズには感動がわき上がる。



 もちろんレイノルズはもういないのだが、彼の作品群は次世代のファンに半永久的に支持されるのだ。全ての映画好きに“これからもずっと楽しんでくれ”と告げているようで、観ていて胸が一杯になる。ヴィックの世話係になった若い娘リルはメンタル面で問題を抱えているが、彼と行動を共にすることによって人生を前向きに捉えるようになる。それは映画祭に集う連中にしても同じことで、あこがれの映画スターが同じ時代を生きたことを再認識し、改めて今後に向き合ってゆく。

 レイノルズは好演で、この映画でキャリアを終えたことはある意味幸せだったのかもしれない。リル役のアリエル・ウィンターをはじめ、クラーク・デュークやエラー・コルトレーン、チェヴィー・チェイスなど他の面子も良い仕事をしている。それに「ヘアスプレー」のニッキー・ブロンスキーが久々に映画に出ているのも嬉しい。

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