元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シンデレラマン」

2015-05-05 06:37:37 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Cinderella Man)2005年作品。アカデミー賞を獲得した「ビューティフル・マインド」(2001年)のロン・ハワード監督&ラッセル・クロウ主演のコンビが再び挑んだ感動作という触れ込みながら、実際はどうしようもない出来だ。

 1929年、気鋭のボクサーとして注目を浴びていたジム・ブラドックは、右手のケガによってリングに立てなくなる。しかも折からの大恐慌によって、妻メイと3人の子供を抱えた彼の生活は困窮を極める。何とか日雇いの肉体労働で糊口を凌ぐジムだが、そんな仕事も少なくなるばかり。そんな時、現役時代のマネージャーだったジョーが世界ランキング2位の若手ボクサーとの対戦の話を持ってくる。試合の直前になって対戦相手がキャンセルしてしまったために、ジムのもとにお鉢が回ってきたのだ。



 彼はファイトマネー欲しさにメイの制止を振り切って難敵に挑む。しかしいつの間にか肉体労働によって左腕が強化されていた彼は、思いがけず勝利を収める。この試合が契機となってカムバックした彼は次々と対戦相手を打ち破り、ついにはヘビー級世界チャンピオンに挑戦する権利を得るまでになる。

 大恐慌時代に活躍した実在のボクサー、ジェームス・J・ブラドックの半生を描いた伝記映画だが、こういうスポ根ものに不可欠な“熱さ”が皆無。したがって盛り上がりもゼロ。もちろん、意図的にパッションを排除して対象を引いて見るという手法もあるのだが、本作の場合、真っ当な根性ドラマを作ろうとしているのに中身は無味乾燥なのだから始末に負えない。

 こういう題材を、脚本通りに撮り上げることには長けているがキャラクターの内面などまるで描けないハワードみたいな監督に任せること自体が大間違い。

 クロウの演技も賞狙いのクサさ100%・・・・と言いたいところだが、最初から監督の資質と題材が乖離しているので、何をやってもクサさどころか印象さえ残らない(これは、メイ役のレニー・ゼルウィガーはじめとする他のキャストも同様)。

 それでも肝心の試合場面が優れていれば許せるのだが、これもヒドい。いくらラウンドを重ねても疲れた様子さえ見せず、まったく腫れ上がっていない顔で序盤と同じスピードを維持する。クリーンヒットを何発貰っても平気の平左。クリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」よりはマシだが、この緊迫感のない試合運びは見ていてバカバカしくなってしまう。

 「ビューティフル・マインド」とは違い、オスカー候補にはまるで引っ掛からなかったのも当然だ。公開当時には有名人の賛辞を並べたCMが流されたが、今から考えるとそれも虚しい。

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