元・副会長のCinema Days

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「Zola ゾラ」

2022-09-18 06:21:59 | 映画の感想(英数)
 (原題:ZOLA)86分という短い尺ながら、恐ろしく長く感じられる。面白くも何ともない映画。断じてカネ取って劇場で見せるようなシロモノではない。ハッキリ言ってしまえば、途中退場しても少しも後悔しない内容だ。とはいえ、聞くところによると評論家筋にはウケが良いらしい。世の中、分からないものだ。

 2015年、デトロイトでストリッパーとウェイトレスを掛け持ちしているゾラは、ある日、働いているレストランにやってきた客ステファニとダンスという共通の話題を通して意気投合する。翌日、ゾラはステファニから“フロリダで良い稼ぎになるダンスの仕事がある”と誘われ、急な話に戸惑いながらも同行することになる。旅のメンバーはステファニの他に、彼女の恋人だという若い男デレクと、ガラの悪そうな中年男だ。そして現地に着いてみると、聞いた話とは違っていた。

 デトロイト在住の一般女性アザイア・“ゾラ”・キングがツイッターに投稿した文面を元に製作されたシャシンらしいが、本作の売り物はその“ツイッターの映画化”というアイデアのみである。もちろん、元ネタがどうであれ映画として面白ければ文句は無いのだが、これがまったくダメだ。

 ドラマの導入部は典型的な“巻き込まれ型サスペンス”の様相を呈しているが、実際にはサスペンスなんか少しも醸成されていない。ゾラがフロリダでやらされるのは、ステファニの売春の手引きである。ダンスの仕事ではないのは不当だが、別に命の危険にさらされることは無く、ゾラ自身が客を取らされることも無い。

 よく考えてみれば、ステファニがゾラを誘う理由なんか最初から存在しないし、デレクが同行する必然性も無い。やさぐれた連中ばかりが登場するにも関わらず、事件らしい事件も起こらないのだ。ジャニクザ・ブラボーなる監督の腕前はパッとせず、盛り上がりに欠けるシーンが漫然と続く。また、R18指定らしいセクシャルな場面やバイオレンス描写も存在しない。

 ゾラとステファニ、そしてその他のキャラクターすべて魅力に欠けるが、テイラー・ペイジにライリー・キーオ、ニコラス・ブラウンといったキャストも印象に残らない。設定だけならば、もう少しマトモなスタッフが関与すれば見どころのある作品に仕上げられるはずだ。製作方針の誤謬としか言いようがない。
コメント
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