元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マドンナのスーザンを探して」

2022-09-09 06:22:00 | 映画の感想(ま行)
 (原題:Desperately Seeking Susan )85年作品。マドンナが大ヒットアルバム「ライク・ア・ヴァージン」を発表して人気絶頂だった頃の出演作だが、邦題とは違って彼女は助演クラス。出番もそう多くはない。中身も時代を感じさせるもので、今から考えると古さは否めないだろう。だが、当時のトレンドの一番勢いのある側面を掬い取ったようなパワーは感じる。

 ニュージャージー州の地方都市に住む28歳の平凡な主婦ロバータ・グラスは、ある日美容院で読んでいた新聞に“スーザンを探している”という尋ね人広告を見つける。スーザンのプロフィールも判然としない妙な記事だが、倦怠期に突入した夫ゲイリーとの生活から逃れたかった彼女は、勝手にスーザンを探すことを決意する。



 そのスーザンは無軌道な女で、行きずりで関係を持った男のバッグからイヤリングを拝借する。しかし、その男は泥棒でイヤリングは盗品だった。一方、転倒して頭を打ち自分が誰だか分からなくなってしまったロバータは、ひょんなことでスーザンと間違われ、イヤリングを取り戻そうとする悪者どもから追われるハメになる。

 主人公の一時的な記憶喪失をネタにして、周囲の人間関係が錯綜するという話だ。ストーリーだけを追えば面白くなりそうなのだが、監督のスーザン・シーデルマンの腕前がそれほどでもなく、サスペンスどころかコメディ風味もうまく醸成されていない。もっと上手い演出家が手掛ければ、それ相応の成果は残せたはずだ。

 しかしながら、あまり嫌いにはなれない。それは、明るくポップな雰囲気が作劇の不備を巧みにカバーしているからだ。ロバータとスーザンが身につける衣装はかなりダサいが、実に楽しそうに着こなしているので気にならない。それどころか、この時代に対するノスタルジアも感じさせて好印象だ。使われている楽曲の数々は過剰にライトで深みは無いのだが、映画のカラーとよく合っている。またマドンナ自身が歌う「イントゥ・ザ・グルーヴ」もナイスなナンバーだ。

 主演はロザンナ・アークエットで、意外な(?)好演。彼女は本作で第39回英国アカデミー賞で助演女優賞を受賞している。エイダン・クインにマーク・ブラム、ウィル・パットン、ジョン・タトゥーロという濃い面々に加え、ジョン・ルーリーとリチャード・ヘルが顔を見せるのも嬉しい。トーマス・ニューマンによるメイン・スコアも悪くない。
コメント
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