元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「この子は邪悪」

2022-09-24 06:12:23 | 映画の感想(か行)
 開巻数十分までは面白くなりそうな雰囲気は醸し出していた。だが、ドラマの概要が見え始めると次第に鑑賞意欲が減退。後半になるとストーリーの迷走が止まらず、終盤は観客を無視したような処理が罷り通り、呆れ果てて劇場を後にした。このシャシンがオリジナル作品の企画コンテストで入選したネタを元にしているというのだから、脱力するしかない。

 甲府市で心理療法室を開業している窪司朗は、妻と2人の娘と平穏に暮らしていた。だがある日、交通事故に遭い重傷を負う。妻は昏睡状態に陥り、何年も意識が戻らない。次女は顔に重度の火傷を負い、五体満足なのは長女の花だけだ。彼女はひょんなことから高校生の四井純と知り合い、仲良くなる。彼は母親が心神喪失状態で、その原因を探っているという。そんな時、司朗が5年ぶりに目を覚ましたという花の母を家に連れて帰ってくる。久々の一家団欒が戻ると思われたが、花は以前の母とは違う雰囲気に戸惑っていた。

 久々に再会した親が“本物”なのかどうか分からず、一方で町では心神耗弱状態に陥る者が目立つようになる。この御膳立ては悪くない。うまく作れば訴求力の高いサスペンス物に仕上がったはずだ。しかし、途中から無理筋のモチーフが乱立するようになり、ラストで明かされる“事の真相”は、あまりにもトンデモで白けてしまう。

 この結末に持って行こうとするならば、当初からもっと大風呂敷を広げるべきだ。そして、製作側にはそれをやってサマになる力量の持ち主が必要だった。ところが本作の監督である片岡翔(脚本も担当)には、その片鱗も見受けられない。彼は過去に「町田くんの世界」(2019年)というアレな内容の作品のシナリオを担当していたが、本作のレベルも同様だ。

 花に扮するのは南沙良で、こういう“心に傷を負った少女”を演じさせれば相変わらずの安定感を見せるが、欲を言えば今後は役柄の幅を広げた方が良いと思う。司朗役の玉木宏はミスキャストだろう。彼は“卓越した腕前を持つ医者”には見えない。もっと別に相応しい俳優がいたはずだ。純を演じる大西流星はジャニーズ系らしいが、あまり印象に残らず。

 なお、ラストショットで「この子は邪悪」という題名の意味が分かるのだが、正直“だからどうした”という感想しか持てない。とにかく、この企画にゴーサインを出した製作陣の姿勢には納得しがたいものがある。
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