元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「あの頃。」

2022-09-17 06:22:26 | 映画の感想(あ行)
 2020年作品。最近の邦画界では安定したレベルを維持していて信頼のブランドと思われていた今泉力哉監督作だが、この映画に限ってはどうにも受け付けられない。題材自体ピンと来ないし、筋書きはどうでもいいし、各キャラクターにも共感できない。ごく狭いターゲットを見据えて撮ったとしか思えないシャシンだ。

 2003年、大阪に住む劔樹人は大学院進学に失敗し、カネも無ければ交際相手もいないドン底の生活を送っていた。そんな中、ふとした切っ掛けで松浦亜弥のミュージックビデオを見た彼はいたく感激。“ハロー!プロジェクト”のアイドルに夢中になった彼は、ファンのイベントに足を運ぶようになる。そこて知り合った個性的な連中と一緒に騒いだり、集会を主催したりと、楽しい日々を送る。だが、時間の経過と共に仲間たちはそれぞれの道に進み、各メンバーは離れ離れになっていく。



 プロデューサー兼ミュージシャンとして実績をあげている劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」の映画化だ。個人的に、劇中で取り上げられる“アイドルオタクの生態”などにはまったく興味は無い。しかも映画では、その“生き様”を幅広い観客に納得させるような仕掛けも見当たらない。

 最初からアイドルにハマった奴とはこういう感じで、こんな行動形態を取るものだという、暗黙の了解事項が傍若無人に横たわっている。だから、門外漢が観てもお呼びではない。映画の後半に、メンバーの一人が重病に罹ったときに劔をはじめとする登場人物たちが大阪に再集結するのだが、そこで何をやるかといえば生前葬と銘打ってはいるが中身は旧態依然たるファンの集会だったりして、脱力するばかりだ。

 今泉の演出は安全運転と言えるが、目立った部分は無い。劔に扮しているのが松坂桃李なのだが、一応は“二の線”で売っている彼に冴えないオタク野郎はマッチしていない。頑張って演じれば演じるほど、違和感だけが印象付けられる。

 仲野太賀に山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウといった面子はオタク仲間になりきっているようだが、キャラ自体の訴求力が低いので感心するには至らない。中田青渚や片山友希、西田尚美などの女優陣も精彩が無い。わずかに目立っていたのが、松浦亜弥に扮した山崎夢羽だ。彼女も実際にハロプロ一派なのだが、とても松浦本人に似ているので驚いた。
コメント
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