元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「卒業白書」

2019-12-08 06:28:08 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Risky Business)83年作品。トム・クルーズのフィルモグラフィの中では、我々がよく知る彼のキャラクター(?)が確立する前の、いわば八方破れ的な役の選び方をしていた若い時期の代表作。こういう無軌道な役柄は、現在の彼にはオファーはまず来ない。その意味で興味深いし、映画自体もけっこう楽しめる。

 シカゴ郊外の高級住宅地に住む高校3年生のジョエルは、一流大学を目指しているものの成績が追いつかない。勉強に身を入れようと思いつつも、考えることは良からぬことばかり。そんな時、両親が旅行に出ることになり、一人で留守をまかされることになった。早速ハメを外してやりたい放題に過ごす彼だが、ついには高級娼婦のラナを家に呼ぶという暴挙に出る。



 ところが、彼女の“料金”はトンでもなく高かった。しかも、彼女のせいで父親が所有するポルシェが湖に沈んでしまい、その修理代にも莫大な費用が掛かる。困った彼は、ラナの提案により金持ちのドラ息子たちをターゲットに一夜限りの売春宿をオープンさせる。ラナの仲間達も加えてこの“事業”は大盛況になるが、両親が帰宅する時刻は確実に迫ってきた。

 とにかく、ジョエルをはじめとする悪ガキ共の言動が痛快だ。しかも、こいつらは日頃マジメに振る舞っているあたりが面白い。つまりは、アメリカの中産階級の事なかれ主義や、若者の皮相的なエリート志向を皮肉っているのだが、説教臭いタッチは微塵も見せず、ライトでスマートに扱っているのはポイントが高い。

 タイム・リミットを設定し、その間をジェットコースター的に各プロットを展開させ、最後には帳尻を合わせるという作劇は効果的だ。多彩な登場人物が入り乱れ、それがまたキチンと交通整理されているのも感心する。これがデビュー作のポール・ブリックマン監督の腕前は確かで、ラナが登場するシーンをはじめとするスタイリッシュな映像処理も決まっている。

 若造の頃のトム御大は実に楽しそうに不良少年を演じる。ラナに扮するレベッカ・デ・モーネイは魅力的。カーティス・アームストロングやブロンソン・ピンチョット、ラファエル・スバージといった脇の面子も悪くない。レイナルド・ヴィラロボスとブルース・サーティースのカメラによる清涼な映像と、タンジェリン・ドリームの音楽が場を盛り上げる。
コメント
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