元・副会長のCinema Days

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「ターミネーター:ニュー・フェイト」

2019-12-07 06:29:55 | 映画の感想(た行)
 (原題:TERMINATOR:DARK FATE)どうしようもない出来。パート3以降の作品を“無かったことにする”という荒業を採用し、傑作との誉れ高いパート2(91年)の“正式な続編”として作られたにもかかわらず、内実は続編ではなく低レベルの“リメイクもどき”に留まっている。久々にジェームズ・キャメロンが関わっていながらこの有様。企画段階で却下されるべきネタだ。

 メキシコシティに新型ターミネーターのREV-9が突如現れ、自動車工場で働く若い女子ダニーを襲う。同じく未来から送り込まれた強化型兵士グレースがダニーを守るが、何とか工場を脱出した彼らをREV-9を執拗に追う。絶体絶命のピンチを救ったのがサラ・コナーだった。サラは何者かが発信する“ターミネーター情報”に従い、この何十年間に発生した不穏な出来事を潰してきたが、そのおかげで全国指名手配されているという。メールの発信源がテキサス州のエルパソだとグレースが突き止め、彼らはアメリカとの国境に急ぐ。だが、REV-9は先回りしてサラたちを抹殺しようとする。



 まず、開巻早々にジョン・コナーが第二作の前の段階で未来から送り込まれていたT-800にあっさり消されるシーンで拍子抜けしてしまった。加えて、スカイネットは消滅したがリージョンという同等の存在が未来では覇権を握っているという。これでは話が振り出しに逆戻りだ。事実、本作は今までのジョンの存在がダニーに交代しただけで、ターミネーターとの追いかけっこが延々と続くという、使い古したルーティンが展開されている。

 しかも、くだんのT-800は人間的な内面を手に入れ(その理由もプロセスも描かれない)、何と妻子もいるのだ。こんな無茶苦茶な話に誰が納得するものか。REV-9はかつてのT-1000と形状と性能がさほど変わらず、新機能は“分身の術”が使える程度でほとんど芸が無い。アクション場面は冒頭のカーチェイスこそ盛り上がるが、あとは暗い中で何やらバタバタやっているだけで、まったく見栄えがしない。

 ティム・ミラーの演出は低調な脚本に引っ張られるようで精彩を欠き、アーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンは“老い”ばかりが目立って気勢が削がれる。かといってナタリア・レイエスが演じるダニーにカリスマ性があるかといえば、そうではない。グレースに扮したマッケンジー・デイヴィスは頑張っていたが、このキャラクターが果たして必要だったのか議論の分かれるところだろう。

 この映画を観ていると、失敗作と言われたパート3(2003年)及びパート4(2009年)が、随分とマシな作品に思えてくる。案の定、本国では客が入らず赤字決算で、この調子では続編の製作も覚束ない。ともあれターミネーター・クロニクルズは、これにて打ち止めだ。
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