元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「君の名前で僕を呼んで」

2018-05-26 06:33:33 | 映画の感想(か行)

 (原題:CALL ME BY YOUR NAME)退屈極まりない映画だ。ここにあるのは、すべて上っ面だけ。何もアピールするものが無いし、そもそも何も描けていない。斯様につまらないシャシンがオスカー(脚色賞)を獲得するとは、今年度(第90回)のアカデミー賞のレベルの低さが分かろうというものだ。

 83年の夏。17歳のエリオは、例年のように両親と北イタリアにある別荘に滞在している。父パールマンは、アメリカの大学に勤務するギリシア・ローマ美術史の教授で、母のアネラは翻訳家。エリオは申し分ない環境の元で、音楽活動や読書に打ち込んでいた。彼の前に、24歳の大学院生オリヴァーが現れる。オリヴァーはパールマンの助手としてアメリカからやってきたのだ。

 エリオの隣の部屋に泊まることになった彼は、ルックスも知性も申し分ない男だった。ある日友人達とバレーボールに興じていたエリオの肩に、オリヴァーの手が触れる。それをきっかけにして、2人は互いを意識するようになる。やがて彼らは懇ろな仲になるが、夏の終わりと共に、オリヴァーが去る日が近付いていた。

 最大の欠点は、エリオとオリヴァーがどうして同性愛関係になったのか、まったく背景が示されていないことだ。2人とも、以前から同性に興味があったようには全く見えない。それが肩に触ったの何だのという些細な事から、いつの間にか深い間柄になってゆくという筋書きには、説得力の欠片も無い。

 ただ何となく、フィーリング(?)でそうなったという図式が漫然と展開されるだけならば、当然のことながらそこにあるはずの激しいパッションや懊悩などはスッ飛ばされる。かと思えば、エリオがオリヴァーのパンツを頭から被ったり、果物相手にマスターベーションを“何気なく”敢行したりといった、単なる思いつきで笑いもインパクトも無いモチーフが並べられ、まさに脱力するしかない。

 監督ルカ・グァダニーノの名前は全く馴染みが無いが、シナリオをジェームズ・アイヴォリィが担当していることには驚いた。アイヴォリィといえば「モーリス」(87年)の監督だ。同じくゲイを扱ったあの映画にあった容赦ないタッチが影を潜め、微温的な“くすぐり”に終始する本作に接するに及び、やっぱり老いは隠せないものだと感じ入った。

 ギリシア・ローマ美術が重要な素材になることはなく、もちろん舞台が北イタリアである必然性も見当たらず、薄っぺらな描写が延々と続いた後、取って付けたような“結末”が恥ずかしげも無く横たえられた幕切れを観るに及び、思わず“カネ返せ!”と叫びたくなった私だ(笑)。主演のアーミー・ハマーとティモシー・シャラメは健闘していたとは思うが、作品の内容が斯くの如しなので、評価するわけにはいかない。
コメント
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