元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レディ・プレイヤー1」

2018-05-21 06:25:37 | 映画の感想(ら行)

 (原題:READY PLAYER ONE)面白い。ただ、観客を選ぶと思う。ネット環境に幼少の頃から浸っている若年層や、こういう世界に最初から縁の無い高年齢層は観てもピンと来ない可能性があるが、40歳代から60歳代半ばまでの者ならば楽しめるだろう。観る者の琴線に触れるような大道具・小道具が目白押しで、しかもそれらが絶妙のタイミングで出てくるというのは、好きな者にとってはまさに堪えられないのだ。

 2045年。環境は悪化して異常気象が続き、対して政治は無策で、それによって経済は荒廃して貧富の差が拡大。ほとんどの者がスラム街で暮らさざるを得ない状況に陥っていた。辛い現実から逃れるように、人々はバーチャルネットワークシステム“オアシス”の中に入り浸り。そんな中、“オアシス”の開発者であるジェームズ・ハリデーがこの世を去る。彼は“遺言”として、仮想世界内に隠された3つの謎を解き明かした者にすべての財産を譲り渡すというメッセージを残していた。

 たちまち激しい争奪戦が勃発。両親を亡くした17歳のウェイドも参戦するが、レースを支配して“オアシス”を我が手に収めようとする巨大組織も暗躍を始めていた。ウェイドは女性プレーヤーのアルテミスや仲間たちと協力し、その陰謀を阻止するために立ち上がる。

 有り体に言えば、本作のテーマは“現実こそがリアルだ(ヴァーチャルはリアルではない)”ということだろう。それは当たり前のことなのだが、昨今では“ヴァーチャルにも現実とは違う価値のある何かがある”といった風潮、およびその認識に導こうとする“動き”があると感じる。もちろん、それは欺瞞なのだ。現実以上にリアルなもの、あるいは現実と比肩しうる価値観なんかが、ヴァーチャルの中にあるはずがない。

 監督スティーヴン・スピルバーグが属している世代(および中年層)では、こういうネタを描く際は斯様な真っ当なスキームを提示する以外の選択肢は無い。あとは“語り口”の問題だ。さすがに海千山千のスピルバーグは、ここでも観客を最後まで引っ張る力技を発揮している。

 ヴァーチャル世界と現実にそれぞれ見せ場を用意して同時進行することによって、作劇面での相乗効果を高めることに成功。さらには“オアシス”の中に現れる、懐かしくも嬉しいコンテンツの洪水には、すっかり嬉しくなる。いちいち挙げるとキリがないので詳細は割愛するが、それでも“ガンダムVSメカゴジラ”のくだりには手を叩きたくなった。

 主演のタイ・シェリダンをはじめオリヴィア・クック、サイモン・ペッグ、森崎ウィンといった若手の面々には馴染みは無いが、皆けっこう良い演技をしている。ベン・メンデルソーンやサイモン・ペグ、マーク・ライランスといったベテランもしっかりと脇を固めている。ヤヌス・カミンスキーの撮影はいつも通り手堅い。音楽はいつものジョン・ウィリアムズではなく、アラン・シルヴェストリが起用されているのが珍しい。やはりデロリアンが登場するので「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のスタッフに声を掛けたのかもしれない。
コメント
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