元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「NARC/ナーク」

2017-12-08 06:40:38 | 映画の感想(英数)
 (原題:NARC)2002年作品。潜入捜査官射殺事件を捜査する“ワケあり”の刑事二人を描くジョー・カーナハン監督作品。カーナハンはこの作品がトム・クルーズに認められ、「ミッション:インポッシブル」シリーズ第三作の監督候補になったという(実際には別の監督が担当)。内容自体も骨太で見応えがある。

 デトロイトの麻薬捜査官ニック・テリスは、犯人追跡中に誤って一般市民に向かって発砲してしまう。悔恨の念から18か月休職するが、その期間も終わり近くになって警察を辞めることを考え始めた矢先、同僚刑事が殺害されるという事件が発生。その捜査の為に上司から復職を命じられる。被害者とタッグを組んでいたヘンリー・オーク警部補と共に犯人を追うことになるが、オークは荒くれ者で知られ、コンビネーションは上手くいかない。それでも捜査を進めるうちに互いに信頼で結ばれていくが、思わぬ出来事が起きる。



 何より主人公二人の造形が見事。犯人追跡中に民間人を巻き込んでしまったことから長期間職場を離れていたニックと、熱血漢だが権限逸脱や犯人への暴力行為も珍しくないヘンリーの、苦悩しながらも命を削る犯罪捜査にのめり込んでゆく警官としてのプライドが痛いほど活写されている。彼らの恵まれない家庭環境などを描くパートも容赦のないリアリズムだ。そして二転三転するプロットの果てに行き着いた意外な結末は“警察官の矜持とは何か”を厳しく問いかける。

 ニック役のジェイソン・パトリックとヘンリーに扮したレイ・リオッタの演技は素晴らしく、特にリオッタはこの映画のために体重を15キロも増やし、まさに迫真の気合をもって役柄に臨んでいる。アラン・ヴァン・スプラングやアン・オープンショーといった脇の面子の仕事ぶりも良い。撮影監督アレックス・ネポムニアスキーによるドキュメンタリー・タッチのカメラワークと、寒々としたデトロイトの冬の風景は効果的。クリフ・マルティネスの音楽も的確だ。

 観賞後は横山秀夫の警察小説を読んだ時のような余韻を残す。その後カーナハンはクライム・アクション映画を中心にキャリアを積むことになるが、いつか大作を手掛けて欲しいものだ。
コメント
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