元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「催眠」

2015-08-23 06:36:25 | 映画の感想(さ行)
 99年作品。殊更持ち上げるような作品ではないが、少なくとも観ている間は退屈しない。ヒマ潰しにテレビ画面で眺めるのには適当なシャシンだろう。松岡圭祐の同名小説の映画化だが、内容は大きく異なっており、まったくの別物だと思って良い。

 都内で“奇妙な自殺”が相次いで起こる。いずれも不自然極まりないな死に方をしており、しかも皆一様に“ミドリの猿”というナゾの言葉を最後に残していた。他殺の可能性を探る警視庁の櫻井刑事は、心理学の専門家である嵯峨に捜査への協力を依頼する。そんな中、嵯峨は偶然に“ミドリの猿”というフレーズを呟く若い女をテレビ番組で見かける。



 その女・由香と面会した嵯峨は、彼女が解離性同一性障害に罹患しており、水井という怪しげな催眠術師に術をかけられて見せ物にされていたことを突き止める。警察は水井が事件の黒幕であると断定して彼を追うが、その間にも犠牲者は増えるばかり。だが、真相は別のところにあった。

 嵯峨は“多重人格専門カウンセラー”という設定だが、そんなものは(少なくとも)日本には存在しないと思う。もっとバックグラウンドを描き込まないと、説得力に欠ける。さらに彼が催眠に詳しいわりには、ウサン臭い催眠術師の術にあっさりかかってしまうのには笑うしかない。それに、たまたま“ミドリの猿”なる言葉をテレビで聞いただけで、強引に事件と結び付けようとする主人公たちの姿勢もホメられたものではない。

 しかし、テンポの良い演出とキャストのパフォーマンスによって、そういうこともあまり気にならなくなってくる。落合正幸の演出は「パラサイト・イヴ」(97年)の頃よりもかなり進歩しており、作劇を淀みなく進めている。

 嵯峨役の稲垣吾郎は頭が良さそうで実は抜けているキャラクターを楽しそうに演じているし、由香に扮する菅野美穂は「エコエコアザラク」(95年)でのキレっぷりを彷彿とさせる怪演だ。場違いなほどマジメくさった宇津井健をはじめ、升毅や大杉漣、四方堂亘、でんでん等、一癖ありそうな顔ぶれは楽しい。ほしのあきと木村多江がチョイ役で出ているのも思わぬ発見だ(笑)。
コメント
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