元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「神々のたそがれ」

2015-08-03 06:23:51 | 映画の感想(か行)
 (英題:Hard to Be a God)全編が汚物と臓物に溢れ、その中を身なりも内面も卑しいような連中が動き回るだけの映画だ。もっとも“見た目が汚いからダメだ”と言うつもりは無い。それなりの映画的興趣やカタルシスが提示されていればイチャモンを付ける筋合いはないのだが、本作にはそれらは見当たらない。正直“スカトロ趣味のある者以外は、受け付けないのでは”と思った(笑)。

 ストルガツキー兄弟のSF小説「神様はつらい」の映画化で、地球より800年ほど発展が遅れた某惑星が舞台。かつてこの星を調査するため30人の学者たちが派遣されたが、その中の一人であるドン・ルマータ(レオニド・ヤルモルニク)は地球に帰らずに居座り、住民からは神のように崇められる存在になっていた。この惑星では中世の暗黒時代のような圧政や知識人の粛清等が繰り返されており、いくら神様扱いされるドン・ルマータでも、それらを傍観するしかない。



 ストーリーはあって無いようなもので、ドン・ルマータがどうして神格化されるようになったのか、この星の権力構造がどうなっているのか、途中で勃発する内乱の結果はどのようなものか、それらは一切具体的に示されない。ただ、小汚い奴らがカメラの前に寄ってきて何やら意味不明のことを毒づく場面が延々と映し出されるだけだ。しかも、撮り方が一本調子でメリハリがないため、しばらく眺めているうちに眠気を催してくる。いったい、これのどこが面白いのだろうか。

 だいたい設定がSF仕立てながら、それらしいテイストが皆無というのも愉快になれない。別に大仰な視覚効果や先鋭的なメカ類を出せとは言わないが、地球上のものではない決定的に異質な意匠を披露してセンス・オブ・ワンダーを演出するぐらいのことはやって良かった。これではただの“中世を舞台にしたアングラ劇”でしかない。



 監督は「フルスタリョフ、車を!」「わが友イワン・ラプシン」(ともに私は未見)などで知られるロシアの巨匠(と言われる)アレクセイ・ゲルマンで、これが遺作だという。製作にこぎつけるため15年を要し、上映時間は3時間近くもある“大作”なのだそうだが、いずれにしろ“構想○○年。製作○○年”といった謳い文句のシャシンにはロクなものは無いことを再確認することになった。全編モノクロで撮られていることだけが救いだろうか。これがカラーだったら途中で退場する者がゾロゾロ出てくることは想像に難くない。

 それにしても、ワーグナーの楽劇と同じ邦題というのはいただけない。そして配給会社による“21世紀の最高傑作!”という惹句はもっといただけない。ここは“21世紀前半を代表するキワモノ登場! 心して観よ!”といった方向性で攻めた方が、マーケティングとして相応しかったと思う(笑)。
コメント
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