元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「暗黒街のふたり」

2014-11-24 06:48:26 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Deux Hommes Dans La Ville )73年フランス作品。我が国における60年代末から70年代後半までの洋画興行界では、アラン・ドロン主演作は一種のドル箱であった。今から考えるとフランス映画が各シーズンの目玉作品としてラインナップに挙がっていたことが信じられないが、それだけこの役者の観客に対する吸引力は絶大だったのだ。私が観ることが出来たこの頃の彼の作品の中で、この映画は強く印象に残っている。

 主人公ジーノはかつて銀行強盗の首領として逮捕されたが、保護司のジェルマンの尽力もあり出所することが出来た。彼がシャバに戻ったことを知った昔の仲間が再び手を組んで大仕事をしようと持ちかけるが、ジーノは断り、愛する妻との慎ましい生活を選ぶ。ところがある日、交通事故に巻き込まれた妻は死亡する。さらに昔彼を逮捕した警部ゴワトローがジーノの更生を疑い、また犯罪に走るのではないかと執拗に監視する。



 月日が流れ、新しい仕事と新しい恋人ルシーを得て平穏な生活を手に入れたかに見えたジーノだが、昔の仲間が銀行を襲ったことを切っ掛けにまたゴワトローが彼に付きまとうことになる。ルシーにまで手荒なマネをはたらいたゴワトローに対し、ジーノの怒りが爆発。しかしそれによって、彼の人生はまたも暗転する。

 ジーノとゴワトローの関係は「レ・ミゼラブル」におけるジャン・ヴァルジャンと警官ジャヴェールとのそれに似ているが、現代劇である本作の方が迫真性がある。一度過ちを起こしただけで、何をやっても上手くいかず、坂道を転がるように逆境にハマり込んでいく主人公像を、ドロンは懸命に演じる。

 ジョゼ・ジョヴァンニの骨太な演出は、この犯罪ドラマを古典的な悲劇のような次元にまで昇華させており、特に痛切極まりないラストには胸が締め付けられた。

 ジェルマンに扮するのは名優ジャン・ギャバンで、ドラマをシッカリと脇から支えている。ミムジー・ファーマーとイラリア・オッキーニの女優陣も美しい。フィリップ・サルドの流麗なスコアと共に、私にとって忘れられない映画である。
コメント
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