元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

国産の高級スピーカーを試聴した。

2014-11-22 09:58:06 | プア・オーディオへの招待
 去る11月1日から3日まで北九州市小倉北区のAIMビル(アジア太平洋インポートマート)で開催された第28回オーディオ&ヴィジュアル展示即売会に足を運んでみたが、そこで聴くことの出来た国内メーカーのスピーカー2機種のインプレッションを書いてみたい。

 ひとつは、PIONEERのハイエンド部門のブランドであるTADの新型スピーカー、Compact Evolution One(CE1)である。TADの製品は過去に何度も試聴しているが、いずれも印象は最悪であった。作り手に音楽好きが一人もいないと思われるような無味乾燥な音で、長い時間聴いていられない。だから正直、本機にもあまり期待していなかった。



 ところが、この新製品はだいぶん様子が違っていた。実に聴きやすいサウンドなのである。高音も低域も十分に伸びた情報量の多い展開だが、その中でイヤな音は一つとして見当たらない。全てが滑らかで品位を感じさせる。もちろん欧米ブランドのような明るさや色気は希薄だが、聴感上の物理特性の高さと同時に、ハイファイ度をいたずらに強調したような外連味も無く、各音像を整然と送り出してくる行儀良さが心地良い。

 このTAD-CE1は、TADのコンシューマー向け製品の中では一番安い。とはいってもペアで160万円だから一般ピープルには縁の無い商品なのだが、同ブランドの上位機種みたいに犯罪的な高価格ではない。しかも、新開発のユニットやスリット形状のバスレフポートを本体側面の両側に配置する独自の規格を採用するなど、明らかに従来とは違う設計コンセプトが見受けられる。

 おそらくは同価格帯の海外製品と比べても、十分な競争力を持ちうるモデルかと思う。このノウハウを普及機種にも応用してもらいたいものだ。

 もう一機種は、岐阜県中津川市にあるガレージメーカー、KISO ACOUSTICが去年(2013年)リリースしたHB-X1である。以前同社のHB-1を聴いてその能力の高さに舌を巻いたが、この新作はそのブラッシュアップ版だ。外観は前モデルとあまり変わらないが、内部設計は根本から見直されているという。



 実際聴いてみると、サウンドも進化していることを実感出来た。アンプに海外ブランドのハイエンド機を持ってきている影響もあるだろうが、片手で持てるようなサイズのスピーカーが広大な音場を創出していることに驚愕する。聴感上のレンジは広く、大編成の音源を大きなヴォリュームで鳴らしても、まったく破綻が無い。しかも、前作には無かった音色の明るさや艶も感じさせ、まさにコンパクト型スピーカーの究極の形を見るようだ。

 価格は170万円と、HB-1の130万円よりもさらに高額だが、値段に見合った価値を見出す(金回りの良い)ユーザーも少なくないと思う。もちろん、TAD-CE1同様に欧米ブランドとも真正面から勝負出来るだろう。

 いつもは国産スピーカーに関しては辛い点数を付ける私だが(笑)、この2機種については及第点だ。優秀なエンジニアが、明確なコンセプトの元で真面目に仕事をすれば、納得出来る製品を作り上げられるということを実感した(まあ、高すぎて私には買えないが ^^;)。

 フェア会場ではジャズシンガーのミニライヴやオーディオアクセサリーの聴き比べなどのイベントが行われていたようだが、時間が無く見られなかったのが残念。特に指揮者の北村憲昭の講演は聞きたかった。福岡市で行われる春のフェアでも興味深い出し物を期待したい。
コメント
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