元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「小野寺の弟・小野寺の姉」

2014-11-17 06:35:08 | 映画の感想(あ行)

 ヘタな映画だ。御膳立てだけは思わせぶりだが、作劇は陳腐で描き方も通り一遍。監督が素人だからイケナイのか、撮らせたプロデューサーに責任があるのか、そんなことはどうでも良いが、とにかく安手のテレビドラマ並の訴求力しか持ち合わせていないのには閉口する。

 東京の下町の一軒家に住む小野寺進とその姉のより子は、早くに両親を亡くしてから、ずっと2人で生活している。進は33歳でより子は40歳にもなるが、今のところ浮いた話はない。より子は内向的な進が新しい恋愛に踏み出せないことを心配しているが、進は姉よりも先に幸せを掴むことに対して気後れしている。

 そんな“膠着状態”になっていた小野寺家に、ある日一通の手紙が誤配達される。2人はわざわざ本人に手紙を届けに行くのだが、それを切っ掛けにこの姉弟の間に波風が立ち始める。

 そもそも、向井理と片桐はいりが姉弟役というのは無理がある(笑)。元ネタの舞台劇ではそれで良かったのかもしれないが、登場人物のクローズアップも併用される映画版では、設定から考え直すべきであった。それにいくら進が身だしなみにも気を遣わないオタクなキャラクターであっても、演じているのが向井なので“オレってモテないし”と言わんばかりの態度を示しても、観ている側としては嫌味としか思えない(爆)。

 小野寺家に誤配された手紙の宛先は“岡野薫”とあるのだが、名字も住所も大きく異なる場所に間違って届けられるほど、日本の郵便事情はヒドくはない。岡野薫は絵本作家を目指す若い女で、進と仲良くなるのは約束通りの筋書きながら、進のアドバイスを何の疑問も持たずに受け入れてしまうのは噴飯物である。素人の意見に左右されてしまうようでは、プロにはなれない。演じる山本美月の拙さも相まって、主要キャラクターであるはずの彼女の存在感は限りなく小さく見える。

 より子は勤務先の眼鏡店に出入りする業者の男と良い雰囲気になるが、両者の外見上の“格差”は物凄く大きく(何しろ相手の男に扮しているのは及川光博なのだ)、事前に結末が分かってしまう。進と薫との仲も予想通りの展開しか示さず、結局は序盤に提示されたモチーフの配置を一歩も逸脱すること無く終わってしまう。

 この姉弟は一連のやり取りを経て“成長”しているのかというと、たぶんそうなのだろう。しかし、常人から見ればイレギュラーな地点にいた二人が、少しばかりノーマルな路線に近付くプロセスを何の芸も工夫も無く漫然と追うだけでは、映画にはならないのだ。

 これが初監督になる西田征史は原作者でもあるが、やはり演出力が足りない。外連味のある設定を無理矢理納得させるような力業が必要なはずだが、アマチュアに近いこの監督にそれを望むのは不適当だろう。別に観なくても良い映画だ。
コメント
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