元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スウォーズマン 女神伝説の章」

2007-11-12 07:27:57 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Swordsman 笑傲江湖 東方不敗 )93年作品。製作ツイ・ハーク、監督チン・シュウタンの「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズのスタッフが送るアクション編で、90年に製作された「スウォーズ・マン」(日本未公開)の続編である。時は明朝、秀吉に追われて大陸に逃れた武士たちと中国の武装宗教団体“日月党”の教祖・東方不敗が結託し、天下を転覆させようとたくらむ。先代の教祖の部下であった主人公・リン(リー・リンチェイ ←今のジェット・リー)と妹弟子のイー(ミッシェル・リー)らはこれを阻止せんと戦いを挑む、というのが粗筋。

 東方不敗を演ずるブリジット・リンの存在感が凄い。本来は男であったが、クンフーの伝説の奥義書“葵花寶典”をマスターするため性転換。普段は“男”として取り巻きの女たちを愛するが、“女”として主人公にも惹かれているバイセクシャルという設定だ。ブリジット自身の美貌もさることながら、宝塚の男役や男装の麗人的な性別不明の妖しい魅力を発散。ぞくぞくするほどエロティックだ。ツイ・ハークの手による作品には、強さと美しさを兼ね備えた女性がよく登場するが、今回は性を超越しているため、よりいっそうインパクトが強い。作者の性的コンプレックスをも表していると思ったりするほどだ。

 もちろん、この映画の主眼はアクション場面である。これがもう呆気にとられるほどスゴい。得意のワイヤー・アクションがかなり成功しており、どいつもこいつも当然のごとく空中を疾駆する。今回は怪しげな日本の忍者軍団も登場。ド下手な日本語が御愛敬だが、目にも止まらぬ早業の連続で気にしているヒマなどない。

 そして東方不敗の滅茶苦茶な強さ。刺繍糸と針を武器にしてバッタバッタと相手をなぎ倒す“彼女”に対抗し、リン側も剣やムチ、巨大な鈎爪で立ち向かう。蘇った先代教祖の“吸精大法”みたいな荒唐無稽な必殺技も飛び出し、これでもかこれでもかと壮絶なバトルを繰り広げる出演者の頑張りには頭が下がる。

 ラストでは東方不敗は(とりあえずは)海に消えるのだが、また別の勢力が台頭し、国内に居られなくなった主人公たちは日本に逃げるシーンで終わる。そういえばツイ・ハークの映画の最後は活劇らしいスカッとした爽快感には無縁だ。娯楽映画の作り手としては、微妙な屈折感を持ち合わせていて興味深い。
コメント
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