気になるキーワードや製品のコレクション(IT編)

メルマガ、新聞、雑誌などに登場する(増田悦夫の)気になるキーワード、製品を取り上げ、ITの進展をフォローします。

“偽(にせ)広告”とは

2024-05-10 23:22:32 | セキュリティ技術・サービス・脅威

お金をだまし取るなどの悪意を持った何者かが個人や企業などになりすます形で表示や配信される虚偽の広告です。「フェイク広告」あるいは「詐欺広告」などとも呼ばれます。

従来からこの種の広告は存在していました※1が、2019年頃からAIを応用した画像・映像作成技術で作られた(とされる)偽広告(注:「ディープフェイク※2」とも呼ばれる)が出回るようになり、警戒感が高まっています。

この種の偽広告は、影響力のあるタレントや専門分野の著名人の画像や動画などが、(音声まで含めて)真偽の判別がつきにくいほどそっくりに加工され、本人になりすまして宣伝するような内容となっていたりします。例えば、有名芸能人になりすまして健康食品を推薦したり、著名な経済ジャーナリストや実業家などになりすまして投資を呼びかけたり情報商材を販売したりするものです。個人になりすます以外でも、企業ロゴのコピーを無断で使用して金融・証券関連の大手企業になりすますものも後を絶たないようです。

偽広告による直接の被害者だけでなく、なりすましにより仮の広告主に仕立てられ直接の被害者からの問合せへの対応に追われる著名人や企業などもある意味被害者であり、今後、このような被害者を出さないようにするための対応が急がれるところです。

AIを用いて作られた(とされる)偽広告による被害は、ある面で、AIを利用して公道を走る自動運転車によって引き起こされた事故による被害と似た側面があるように思います。責任の所在が歩行者なのか、自動運転車メーカーなのか、AIの設計者なのか、道路インフラなのか等、法の整備も追いついていないことなどから、切り分けが難しかったりします。偽広告による被害の場合も、同様に、ルール作りや法の整備等が追い付いていない状況であり、責任の所在が、偽広告に対しアクションを起こしてしまった被害者、広告を真偽判断せず掲載したSNS等のプラットフォーム、偽広告の設計者等の切り分けが現時点で難しい状況です。安全確保のための、国内だけでなく国際的な取り組みの推進が望まれます。

なお、「偽広告」に類似した用語に、インターネット広告の分野で使われる「広告詐欺(アドフラウド)」があります。例えば、後者についての関連ブログ("アドフラウド(広告詐欺)"とは、2017.3.25)は以下です。

https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/40e377f9ec02cf61cd4b3c79979709fd

※1 例えば、(1)会員同士がパソコン通信を行う環境において、第三者が会員になりすまし、「中古パソコンを××円で販売」との偽広告を会員に送信、購入した会員が代金をだまし取られるといった事例(1992年)、あるいは(2)中国の検索大手「百度(バイドゥ)」において、上海の有力引っ越し業者になりすました偽広告を掲載、当該業者に依頼した利用者が事後に広告の内容と異なる多額の引っ越し料金を請求されるといった事例(2010年)、など。

※2 AIで利用されている深層学習(ディープラーニング)と偽物(フェイク)とを組み合わせた造語。


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