日々、色々な不具合の作業依頼の相談を受けますが、車両がほぼノーマルの場合は、整備不良の場合が多いので、ヤマハのサービスマニュアルに沿った指定整備を行えば、直せることが多いですが、ヤマハのサービスマニュアルは、一般向けではなく、整備の資格と知識を持った整備士向けになっていますので、基本的なことは記述しておらず、あくまで車種別の注意点や作業手順が書いてあるだけです。また、社外品(カスタム部品等)を追加する場合や、交換する場合は、要注意です。さらにメーカーが違う部品を組み合わせるのは、現物合わせになるので、さらに大変です。社外部品を選択する場合は、正直、売られているすべての部品が純正より良い部品とも言い切れないので、部品を見る目も必要です。
コンディションレベルチェックパックでお預かりです。外観上特にオイル漏れ等は無いですが、若干、Vバンク間のセパレーター部左側にオイルの滲みがありますが、気になるほどではないです。
フロントタイヤは、ダンロップ純正で問題無いですが、リアはミシュラン製でHレンジ、ワンサイズ太いタイヤで溝があまり無いです。スピードレンジが違うとタイヤの剛性も変わります。また、リムに対してオーバーサイズのタイヤを組むと形状がおかしくなるので、曲がらなくなることが多いです。リムに装着できる適正サイズと車種に見合ったスピードレンジを選択することが重要です。
リアサスは、新車時の部品のようで劣化があり、バンプラバーも無くなっています。
リアフェンダー裏に、フラットバーを装着すると、フルボトム時やリアタイヤが高速回転時に縦に伸びて接触の可能性があります。
純正のリアサスもプリロードと伸び側ダンピングが調整できます。ただ、プリロードを掛けすぎると相当荷重が掛からないと動かないので、路面に追従できず乗りにくくなります。おそらく今回は、リアフェンダー裏に鉄製のフラットバーが付いているので、タイヤの接触を防ぐ理由があったと思います。
フロントフォークは、エア圧が1.6でしたので、0.4に戻しました。メーカー指定値は、0.4~1.0です。リアサスのプリロードを上げた場合は、フロントのエア圧も上げるように指定されています。ただ、入れすぎるとオイルシールからフォークオイルが漏れる場合があるので要注意です。
フルードは、交換時期不明です。
クーラントは、エンジンオイル混入や漏れ等は無さそうですが、交換時期不明で、リザーブタンクの液面が少し低いです。(量少)
エンジン始動前と始動後の油面です。
アクセルワイヤーのステーが曲がっています。曲がっている場合は、ワイヤーが擦れるので、アクセルが重くなるのとワイヤーが切れる場合があります。
マスターは、ブレーキとクラッチの両方ともで大人ニッシンのラジアルタイプです。ブレーキ側は問題無いですが、クラッチ側は、ピストン径不適合です。(設計が古いので、クラッチレリーズ側のピストン径が大きめです。)
エアクリーナーは、純正ですが交換時期不明です。ダイヤフラムは社外品でした。社外品も何種類かあるようですが、ピストン部がアルミ製のものは、使わない方が良いです。純正は、ピストン部が樹脂なので、摩耗してもダイヤフラムを交換すれば、ほぼ問題無いですが、社外品でピストン部がアルミ製だとキャブレターボディ側も削れるので、キャブレターが使用不能になります。基本的に純正の作動部は、消耗部品の方が材質が柔らかく相手側があまり摩耗しないようになっています。
レギュレーターは、外国製の社外品のようです。信頼性が低い事例が多いので、純正もしくは日本製に交換した方が良いです。バッテリーは、Long製でした。
バッテリーの点検です。
エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は、平気そうです。
ガソリンタンク内は、錆止め処理がされていました。スパークプラグは、NGK製JR8Cでしたが劣化していたので新品交換です。
フロントキャリパーは清掃されているようですが、右側キャリパーのパッド押さえ板が逆方向です。純正キャリパーでパッド押さえ板が入っている理由は、回転方向にパッドを押しつけて、ブレーキ作動時にパッドの裏板(鉄製)がキャリパー(アルミ製)に激突しないようにしています。激突するとキャリパー側が凹みます。
リアキャリパーは要清掃です。ステムベアリングは、緩かったので調整しました。
今回交換した部品です。
最終チェックと試乗です。コンディションレベルチェックパックは、車体増し締めを行いますが、ほとんどの車体は、緩いことが多いです。また、キャブレター点検調整&同調も行いますが、キャブレターの前に点火系の点検も行い、プラグがダメな場合は新品交換後に同調を行っています。無事納車になりました。
2025.01.18 作業担当 ヤダ