ウヰスキーのある風景

読む前に呑む

ブービートラップ

2011-05-07 | 雑記
夜勤明け、また一駅前から歩いて帰ろうと歩き始めたら、電話が鳴った。なぜか公衆電話から。

出るといつぞや間違い電話をしてきたおばさんの声がする。この前お世話になりました、公衆電話だからすぐケータイに変えるねと一方的にしゃべり、きられる。

一体誰と勘違いしているのか。

で、少ししてまたかかってきた。えっちゃんよ、と言っている。知らぬ。どなたですか?と聞くと某エツコだという。だから知らぬ。

一月前にやっちゃんとお世話になりました、などと曰う。やっちゃんとは誰か?と聞くとミズグチヤスコのことだと、何をとぼけているのよという風に答える。

どちらも知らないし一ヶ月前に世話した覚えなど無いと答える。前のときも言っていた、京都の何々ちゃんよね?を繰り返す。

そしてこちらの電話番号を暗誦するのだが、間違いは無い。間違いは無いが教えた相手が違う電話番号を伝えたとしか思えない。もしくは勘違いしたまま覚えているか。

「あなた以前も同じ電話してきましたよね?前にも言いましたが僕は京都の何々ちゃんではないないですよ。」と少し腹立たしげに言い返した。

すると、ようやく違う相手だとわかったのかぽつりと「そういえば声が違うような・・・」


といったやりとりがあったので、眠気がとんでしまい、歩くのが楽になった。

歩きながら考えたのだが、こういうべきだった。「電話番号を聞いた相手にちゃんと確認してください」と。



まあいい、帰って飯でも作ろう、と思って金を少し下ろし(ほとんどなかった)しばらく歩いていくと、たまーに寄る蕎麦屋の前に来た。まだ開店にはちょっと早い時間だったのだが、店員らしき男性がなにやらしている。

大体その位置はお勧めメニューの黒板が置かれたり、椅子が置かれたりするのだが、椅子を一脚置いてその上にダンボールの箱を置いている。遠めに白い張り紙が見えるのだが、上から布(近くで見るとカーディガンだった)をかぶせてあり、張り紙には「捨て猫です。誰か飼ってください」とある。

ああいう文句は昔の漫画くらいでしか見た覚えがなかった。店員が店の中へ入っていった後、猫の箱あたりで店に入ろうか相談していた中年女性二人連れも入っていった。まだ開店してないんじゃないかと思ったが、気になったので布をどけて中を見る。子猫が二匹ほど丸まっていた。さっき生まれた、というわけではないが、まだほんの子猫だった。

「わしが南方熊楠だったらたぶん連れて帰ったろうな」と考えて、布をかぶせなおして家のほうへ足を向けた。

が、たまには蕎麦を食べるのもいいだろうと結局引き返すのであった。


猫が気になってしまっただけ、といえばそうなのだが、蛸飯がおいしかった。ちょっと味が濃いかなと思ったが、蛸の味がしっかり出ているのだろう。春らしく小鉢は筍の煮物だった。若竹煮とかいうのはわかめを使うのだろうが、菜の花か何かと一緒になっていた。

ついでにグラスビールも頼んでみたが、泡の感じが実に滑らかだった。これならビールを飲みに来るだけでも悪くない。


さて、子猫が気になったのでまた帰りに見てみたら、さっきの男性店員が傍らにいる。通りがかりの女性が気になったらしく、猫の相談をしていた。「親と相談して考えますね!」と去り際に言い残していった。
子猫二匹か、と覆いが剥ぎ取られた箱の中を覗いてみたら、なんともう一匹いたという。パンダみたいな柄の猫がニャーニャー鳴いている。

店員に「どれくらい経ってるんですかねェ」と訊ねれば「十五日くらいじゃないかと思います」と答える。まだ母親がいないと駄目な時期である。

元気なパンダ猫の頭を撫でつつ「いい人にもらわれるんだぞ」と声をかけ、店員にも「じゃあ、また」と軽く挨拶し、店を後にした。
またそのうち寄ってみようと思ったが、それにしても効果抜群な罠だった。

南方熊楠と猫については、ホントかはしらないのだが、妖怪漫画家の水木しげるが描いた『猫楠』にエピソードが載っている。ロンドン時代、乞食みたいな生活をしているのに猫だけは飼っていたそうだ。ロンドンの時は猫に世話になったもんだなどと、冒頭の友人と話しているシーンでしゃべっていた。


猫の話はおしまい。では、動画を公開。連休済んでからにしようかと思ったが、人によっては今度の月曜まで休みなどというのもあるだろうから、一応途切れた六日の金曜にしようと思ったのだが、結局日付は変わっていた。

八十二発目



さてさて、また少し暇ができたので体調を整えて続きに取り掛かりたいところ。縁起でもないが地震がまた来ないうちに。では、また。