ジョセフ・コーネル、コラージュとモンタージュ展

2019-06-18 | 日記

            

展覧会カタログの表紙写真。無地の紙に、雑誌から切り抜いた少女を貼っただけのものである。「哲学は驚きに発して、驚きに終わるのである」という言葉がある。そして「偉大な思想は心臓から来る」という言葉がある。絵画の世界に偶然性を持ち込み、その偶然性に対して驚くことは、心臓に動悸を打たせることであり ( これをパルピテーションという ) 、このことは絵画の、また、芸術の原動力でなければならない。ここには、史上初めてのビジョンが造形されている。単純だが、真に新しい芸術の誕生である、と思う。コラージュという手法を発見したのは誰かは知らないが、コラージュという手法によって現出する非現実世界が、驚きに満ち満ちた真の現実世界をかいま見せてくれるのである。ジョセフ・コーネル (1903-1972) という超感性世界を持った一人の天才芸術家によって、僕らのもう一つの視覚現実を発見させてくれたのである。哲学者イマヌエル・カント (1724-1804) の言葉にこういうのがある。

多様な自然の秩序を、研究の眼をもって思慮深く追求する者は、予期しなかった智慧を見て、驚きに陥る。そしてその驚歎から我々は脱することはできない。そしてその情緒は理性によってのみ引き起こされるので、一種の神聖な戦慄であって、自分の却下に、超感性的なものの深淵が開かれるのを見るのである

コラージュという一つの芸術的手法によって、誰でも、思慮深く追求する者であれば「自分の却下に、超感性的なものの深淵が開かれるのを見る」ことができ、それを見た者は驚くのである。それは、我々のすぐの足下に、現実の世界が存在している、ということに驚くのである。さらに、この驚きこそが新しい芸術を創造するのである。というようなことを、僕はコーネルの作品を思うたびに、そう思うのだった。