夜の野花

2019-06-15 | 日記

          

新しく手に入れた花瓶に野草を差した。画家ジョルジュ・モランディ (1890-1964) のモティーフになるようなシンプルな花瓶である。展示会で買ったのである。現代作家の陶器を買うのは、この最近、僕にとっては本当に久しぶりであった。この若き陶芸家は英国で修業されたと聞く。スリップウェアー作品がたくさん並んでいたが、このシンプルな花瓶の姿に一目惚れしたのである。帰って来て、早速に野花を飾ってみた。初夏に涼しい夜の野花。

昨日、買ったばかりの『西東三鬼全句集』(角川ソフィア文庫 平成29年12月刊) を読んでいて、こんな句があった。

                  中年や遠くみのれる夜の桃

三鬼 (1900-1962) の「自句自解」によると「中年というのは凡そ何歳から何歳までをいうのか知らないが、一日の時間でいえば午後四時頃だ。そういう男の夜の感情に豊かな桃が現れた。遠いところの木の枝に。生毛のはえた桃色の桃の実が。」というのである。そういう意味なら、僕はむしろ「中年や」ではなく、「中年に」の方がより切実に迫ってくるような気がする。実際、僕は「午後四時頃」の人間である。そして毛の生えた「夜の桃」が目の前にぶら下がっているのである。「に」に、希望とかを託すのはいけないか。