アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

名曲喫茶「ライオン」

2016-10-09 10:00:00 | 日記

昔、渋谷ハチ公前交差点から少し入った路地裏に「らんぶる」という名曲喫茶があった。アントンKがまだ学生時代の話だから、それこそ40年近くの歳月が流れたことになる。もちろん現在は真新しいビル群に代わって見る影すらないが、今回はそんな名曲喫茶がまだ渋谷に残っているというので、買い物ついでに立ち寄ってみた。

名曲喫茶「ライオン」。1926年創業とあるから、今年で90年ということになる。道玄坂を上り何やら艶めかしいお店の脇を通りながら、人気のない路地をいくと、薄暗い中に大きな緑色の看板が目立つ。確かに建物の外観は、まさに昭和のたたずまいであり、若者で溢れ返っている表通りとは別次元の空間だ。ためらうことなくドアを開け店に入ると、薄暗い中に、ソファが一方向に並んでおり、まるで特急車の車内のよう。これは昔通った「らんぶる」と同じ配列であり、懐かしさが漂う。目の前の大きなスピーカからは、モーツァルトのオペラが流れており、しかも良く見るとターンテーブルが廻っていた。そうこれはLPレコードの音だったのだ。しばしそのレコードの音に耳を奪われたが、遠い日に引き戻されたような錯覚を覚えてしまった。

最近は、よく昔の時代を模したレプリカが流行りで、そんな住宅や街のモデルを目にすることがある。しかしこの店の中は、それこそ90年の歴史を物語るに足りるものはかりだ。「よくぞここまで、」と思わされるが、時代に流されることなく、頑固にまで変わらないことも時には必然なのだと思わされてしまった。名曲喫茶「ライオン」。また再訪してみたい。

2016-10       渋谷/道玄坂にて