アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

鬼才!アファナシエフを聴く

2016-10-23 22:00:00 | 音楽/芸術

今週末は、アファナシエフを聴きに紀尾井ホールに行ってきた。

アントンKがアファナシエフを知ったのは、10年以上前まで遡る。最初は、専門誌か何かで名前を知り、当時から超のつく個性派との触れ込みに、CDを買いあさり、そして演奏会にも何度か足を運んだ。確かにCD録音でも、聴いたことのない雰囲気を醸し出しており、独特の世界観が広がっている。そしてリサイタルでは、それが現実となり初めは、戸惑いがあった。

演奏会は、定刻には始まらず、舞台にはふて腐れて(そう見えるような顔つきで)入ってきて、ろくにお辞儀もせずに、いきなりピアノに向かい、呼吸も整えずにいきなり弾き出してしまう。演奏が終わると、あまり客席の方は見ようともせず、ニコリともせずに、ズボンのポケットに手を入れながらそでに引っ込んでしまった。こんな振る舞いにアントンKは唖然と最初はしたもの。今回も同じようなステージマナーだったが、やはり年齢とともにだろうか、だいぶその振る舞いも昔ほど過激ではなくなったように見受けられた。

しかし演奏の方は、相変わらずの内容で超個性的、圧倒的世界感満載の解釈であり、判っていながら度肝を抜かれた感覚だった。

ピアニストでポゴレリチという天才肌がいるが、ある意味実演から醸し出される色合いは似ているかもしれない。音楽そのものはまるで違うが、ピアノの音色から感じる世界感というのだろうか、聴こえる物以外の後味が近いと感じた。後半のショパンは、正統派の演奏からすれば随分遠いところのものだろうが、音の緩急や強弱の幅は必要以上であり、しかもその音色の美しさは言葉では語れない。アントンKが楽しみにしていたのは、むしろ前半のベートーヴェンの「熱情」ソナタの方だった。極端に遅く開始されたと思いきや、突然の急加速。完全に心の叫びが音符となって我々に届いていた。それにしても今回一番驚嘆したことは、アファナシエフのピアノの響かせ方。透き通るようなピアニッシモの時はもちろん、感情丸出しのフォルテッシモの時にも、決して耳障りではなかったことだった。

一時期は、オーケストラも指揮をして、その個性的な演奏を披露していたアファナシエフだが、最近は随分とご無沙汰になってしまった。将来彼の指揮する管弦楽も合わせて聴いてみたいところ。ピアニストに留まらず、医者でも哲学者でもある彼のことだから、どんな展開が待っているのか楽しみに待ちたいと思う。

ヴァレリー・アファナシエフ ピアノリサイタル

「熱情とマズルカ」

2016-10-22   東京:紀尾井ホール