その当時から関東に住んでいると、忘れがちだった電気機関車はEF61型だったように思う。当時とは国鉄時代だが、同時にその時期アントンKもまだまだ駆け出しの鉄小僧であり、鉄道という鉄道に何でもいいからカメラを向けていたような時期だった。すべてが新鮮に映り、シャッターを切るということの今では比較できないくらいの重みと満足感。その列車を捕まえたというような征服感があったように思う。まだ結果も見ていないうちから、そんな想いに酔いしれた時代だった。現代は、軽薄短小が当たり前、情報があってからの撮影がほとんどだが、当時は全く違っていて、撮影結果はさて置いて、思いの列車をカメラに収めることが出来ただけで満たされもの。その列車に出会えた撮影出来たことが幸福だった。
ようやくモノクロフィルムで撮影した画像のデータ化が、ある程度完成しつつある。ブローニ版から始めて、35mm版がやっと目途が付きそう。次の段階として、被写体ごとに区分けする膨大な作業が待ち受けているが、まあこれも時間をかけて丁寧にまとめていくつもりである。手元にあった画像より1枚掲載しておきたい。アントンKには、あまり馴染みがなく忘れがちなEF61の荷物列車(荷38レ)名古屋駅通過シーン。曇天から今にも雨が降り出しそうな真っ黒な空に変わり、愕然としていた所に貨物列車のごとく地味に現れたニモレのEF61であった。この時代、日中EF58が構内に停泊しているのも懐かしく右端に写っているが、こんなごくあり触れた日常が、半世紀近く経った今、宝物に思える。
1976-07-24 荷38レ EF61 7 名古屋駅