風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

自主映画『寅蔵と会った日』のこと

2006-01-26 00:45:19 | シネマに溺れる
Torazo3自主映画の初公開というのに行ってきた。作品はさいとうりか監督の『寅蔵と会った日』だ。
どうもインディペンデンス映画=アングラ映画というひと昔前のイメージのあるボクには、現在の自主映画はある面では娯楽作品としても「楽しめる」映画だというのが意外である。
そして昨年末から監督本人とも会う機会に恵まれていたボクは、さいとう監督がこんなにもほほえましい可愛い映画を撮るひとだったというのが、これまた意外性とともに面白かった。
なにしろさいとう監督は、早口の突っ込みタイプの喋りをするひとだ。ま、しかし監督本人と作品は切り離して考えるべきだろうけど、それでも作品もまぎれもなくさいとうりか監督を語るものなのだろう。

「浅草発!ハートフル★すったもんだムービー!!」というコピーがチラシにはつけられている。うん、舞台はたしかに浅草だ。浅草寺の門前も仲見世も「花やしき」も登場する。しかし、浅草である必然がボクにはどうも希薄に感じられた。というのも、浅草のすぐ裏手には境界がどこと明確に言えないような吉原も、山谷もが控えているからだ。主人公の青年が手提げ袋の荷物運びを突然頼まれる寅蔵という「謎の」初老の男は、みなりもさっぱりとしてホームレスの男でもなく、ましてや肉体労働者でもなく、仲見世で「顔」である理由がわからない。「よう!よう!」と気さくに挨拶をかけてき、それで主人公の青年も茜ちゃんとの初デートをすっぽかす羽目におちいるのだが、なんとも気さくでお気楽な男だと言う以外はよくわからない。
これは、寅蔵を演じた石見栄英のひとなつっこい存在感なしには説得性がなかったかもしれない。その点、石見さんは俳優としての長いキャリアのためか、存在感でそこを押し切る。

寅蔵はひと昔前のアングラ映画だったら、警官のナレーションというかたちで説明される説明をはぶいて「謎の初老の男」として「不条理」のままに提示したかも知れない。
そして、映画も主人公が茜ちゃんと仲直りするというほほえましい形で終わる。寅蔵のナレーションがかぶさって寅蔵はふたりの愛のキューピットでもあったかのように……。

うん、これは青春映画だ。「下町(プチ不条理)青春映画」と、ボクならコピーをつけたい作品だった。

(1月22日、23日野方区民ホールで初上映。このあと主演の石見さんの住む博多で上映会が計画されているようです。)

(写真は公式サイトのスチール写真ギャラリーから)→http://www.k4.dion.ne.jp/~torazo



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