風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

『木靴の樹』〜その農的映像美〜

2016-04-20 19:15:43 | シネマに溺れる
上映時間3時間07分。なんと言えばいいのだろう。こんなにまんじりともせずシネマを見ながら、エコノミー症候群になるのではないかと思った映画も、『大地のうた』三部作一気上映を見に行った時、以来かもしれない(その第3部『大樹のうた』が、この岩波ホールのこけら落としの上映作品だった)。それも、ほとんどストーリーというストーリーのない北イタリアの農村での日常が、初冬から初夏まで描かれ、映像の中で季節が巡っていくのだ。
1978年この作品にカンヌ映画祭パルムドールを与えた審査員も凄いが、2000名にも当たる観客がスタンディング・オペレーションをしたと書いてあることが信じられない。
と言ってボクは作品をけなしているのではない。エルマンノ・オルミ監督の1988年作品『聖なる酔っ払いの伝説』など、感動してその作品に一遍の詩を捧げたくらいだ。
この農的な映画作品は、現に見終わって1日経ってから少しずつ沁みてきた。ボクは即反応できなかっただろう。この作品は、まるで発酵するかのように、日がたつにつれ徐々に沁みてくる農的映画作品なのだ。
ああ、あのポー川を下る船のシーンがまた忘れがたい。寡黙な男が、不器用に恋をして美しい娘を妻にする。村の教会で早朝に式を挙げてミラノを目指す。寒村から見れば、その中世的なミラノ市街が大都会に思える。新婚の夫婦は、ミラノの教会で修道女として働く伯母を訪ね、教会で初夜を迎え、そして翌日には(!)天使のような赤児を伯母から授かる。15歳までの養育手当てと、衣類一式とともに…。
「天使は喜びと幸せをもたらす」
農村の人々は、生きとしいけるいのちに対しては、無性にやさしい。素朴とはいえ、いのちを育てるものたちだからだ。
1日たつと沁みてきて、ボクは泣きそうになる。
評価(☆☆☆☆1/2)

http://www.zaziefilms.com/kigutsu/



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