京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KIMURAの読書ノート『居所不明児童 ~消えた子どもたち~』

2015年05月01日 | KIMURAの読書ノート
『居所不明児童 ~消えた子どもたち~』
石川結貴 著 筑摩書房 2015年4月10日

2013年4月横浜市郊外の雑木林で6歳の女の子が遺体となった発見された事件を記憶している方も多いのではないだろうか。親の虐待の末の遺体遺棄事件であったが、この事件はそれでは済まなかった。捜査により、この女の子は就学年齢に達していたにも関わらず、住民票を移動させずに各地を(親により)転々とさせられていたため小学校を入学していないことが判明。この事件をきっかけに、文部科学省がこのような児童生徒が国内にどのくらいいるのか実態調査に乗り出すきっかけともなった事件である。

このように実際に記載されている住民票に存在がなく、かつ公的な支援も受けずに行政の網からこぼれている子どもたちを「居所不明児童(生徒)」と言う。本書はなぜそのようなことが起こっているのか。行政の対応。そして、実際に自身がそのような子どもだったという人、またかつてそのような子どもを受け持った学校の先生のインタビューでまとめられている。

「居所不明」の子どもでありながら、なぜインタビューがとれたのかという疑問がうまれてくるであろう。このインタビューに答えている男性は、まだ小学校を途中まで経験しており、当時の状況をきちんと記憶してということ。このような境遇でありながら無事に大人になれたからである。小学校後半からは親の繰り返す転居(その中には長期間の野宿生活も含まれている)により学校を行く機会が失われ世間的には「居所不明児童」となっている。この転居も学校に親が知らせて、転居するものではなく、いきなり学校を欠席させられ、そのまま別天地への移動。学校も気づいた時には、クラスの子が親ともどもいなくなっていたということである。もちろん、学校側もそれに対して野放しにしてはいない。それは前述したそのような子どもを受け持った学校の先生のインタビューからうかがえる。しかし、そこには法的な問題や、いなくなった子どもたちの親の人脈などがまったく見えてこないために、手を打つ術がないというのが正直なところのようである。また、親はそこに存在しても子どもに合わせてもらえないケースというもの、紹介してある。2004年に起こった岸和田市での虐待事件を覚えているだろうか。虐待死したのが中学生であったということでその衝撃はより強いものになった。この事件の場合は、亡くなってしまったもののその中学生が発見されたということで、「居所不明児童」とはならなかったが、本書でのケースの場合、担任が何度も家庭訪問に行っても、合わせてもらえないまま、半年が経過し、親も忽然と姿を消したという。そして、岸和田虐待事件。このインタビューを受けた教師は、もしかしたらこの事件と同じケースではなかったのではないかと、今もなお心を痛めているという。

文科省の調査により、2014年10月の段階で国内の居所不明児童(生徒)は141名と発表されている。その内訳は未就学児61名。小学生40名。中学生27名。義務教育機関を終えた子が13名である。果たしてこれは正しい数字なのだろうか。生まれた時点から役所にそのことを届けられておらず、もしかしたら虐待をうけながらも存在する子どもたちが想像を超えてたくさんいるのではないだろうか。少なからずこの調査は氷山の一角のように思える。それを実感させてくれる1冊である。

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