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今日も髪はクルックル

コーヒーロースターの毎日です。

リトルグッドバイ

2016-01-03 18:20:16 | Weblog
 もうダメだってわかっているのに、最後の瞬間をむかえるに耐えられないと
思うから先延ばしだってわかっているけれど、いつもと同じ毎日なんて戯言を言っている。
誰もが、いい子だね、って目を細めて頭をなでてくれていたときから、この性格は変わっていない。
愛想笑いは上手だったんだ。だってみんな喜んでくれるんだもの。

 何度も恋に落ち、破れ、を繰り返すときもわかっていた。
彼女じゃなくてもいいだ。だけど彼女じゃなきゃいけない、と思いたい。
ぼくの中には何もない。ぼくの外面にも何もない。ぼくには何もない。
下手くそなうたを歌っていたら、母親に「あんた、うた下手だね、やめなさい」って言われたな。

 満月が好きだった。ダメなぼくをいつも照らして見守ってくれているって思ってた。
だけどいつだって見られてた。好きな彼女に振られた日も、こっけないうたを歌っている日も、
鏡を見ながら浮かれていた日も、同級生に嘲笑れた日も、いつも満月はぼくを見ていた。
ハロー、もういいよ。ぼくはね、全然強くないんだ。

 20数年がたち、頭にも顎にも陰毛さえも白髪の比率が多くなってきた。
あいかわらず何者でもなく、自分というものにも自信がなく、ましてや傲慢なまでの自意識さえない。
ただのさえない、ほんとさえない、白髪まみれの中年になっていた。
毎日生きているのが恥ずかしいから、ありえないくらいのアルコールを飲んでいる。

 なのに病気にさえなれない。
ただの人。あまりに普通過ぎて笑っちゃう。ほんとはずっと知ってたんだよ。
自分は誰よりも普通だってこと。だけど足掻くじゃん、それが若さの標。って、まだ足掻いているよな。
だからさ、ちょっとサヨナラだ。ちっとだけ。諦めのいい大人と。

 今夜は月がキレイだ。
満月まであと13日くらいかしら。もちろん全然そんなこと知らないよ。そう言った方が何か知っているようだろ。
すべてが完璧じゃなくてもいい。大体そんな感じ。リトルグッパイ。
完璧な満月の夜にお会いしましょう。その日まで、小さなお別れ。


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