■Hendrix In The West / Jime Hendrix (Reprise)
ジミヘンが凄い事は重々承知していた十代のサイケおやじを、更なる狂熱地獄に誘ったのが、本日ご紹介のライプ盤でした。
というか、バンド・オブ・ジプシーズを別にすれば、ジミヘン名義の公式完全ライプアルバムは、このLPが出た1972年までは存在しておらず、しかしそのステージでの狂乱暴虐ぶりは記録フィルム等々で我国へも紹介浸透していたのですから、今となっては免疫作用も逆効果だったんですねぇ~~♪
なにしろ最初に聴いたのはラジオの洋楽番組で、実はその時は「Johnny B. Good」と「Little Wing」だけだったんですが、それとて完全放送ではないフェードアウトのオンエアでありながら、瞬時に全身の血液が沸騰逆流させられた興奮は、今も忘れられるもんじゃ~ありません。
そこで勇躍ゲットしたのが、中古ではありますが、掲載したアメリカ盤です。
A-1 The Queen (1970年8月30日:ワイト島)
A-2 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (1970年8月30日:ワイト島)
A-3 Little Wing
(1969年5月25日:サンディエゴ → 同年2月24日:ロイヤル・アルバート・ホール)
A-4 Red House (1969年5月25日:サンディエゴ)
B-1 Johnny B. Good (1970年5月30日:バークリイ)
B-2 Lover Man (1970年5月30日:バークリイ)
B-3 Blue Suede Shoes (1970年5月30日:バークリイ)
B-4 Voodoo Chile
(1969年5月25日:サンディエゴ → 同年2月24日:ロイヤル・アルバート・ホール)
上記収録演目のデータから、このアルバムは様々なライプ音源の名演集でありながら、そこにはジミヘンの急逝という事情を考慮しても、意図的なフェイクは許されません。
なんとっ! これは後に明らかになったんですが、「Little Wing」と「Voodoo Chile」がサンディエゴではなく、ロイヤル・アルバート・ホールからのライプトラック!?
こういう恣意的な情報操作(?)を制作側がやらかしたのは、もちろん良い演奏を集めたいという意思の表れではありますが、結局はロイヤル・アルバート・ホールの音源に関する権利を有していなかった事が大きな原因でした。
しかし、そうやりたくなるのも無理からんほど、ここでの「Little Wing」はリスナーを幻想的なムードに導くほどの素晴らしさであり、「Voodoo Chile」の強烈無比なハードロックフィーリングは、泣きまくりのギターやドカドカ暴れるリズム的興奮も相まって、感動感激の大嵐ですよっ!
ちなみにメンバーはジミヘン(g,vo)以下、ノエル・レディング(b) とミッチ・ミッチェル(ds) の初代エクスペリエンスが最も熟成していた時期とあれば、後は説明不要でしょう。
まさに聴かずに死ねるかっ!
そして同じメンバーによる「Red House」が、これまた永遠の大名演♪♪~♪ 全篇13分ほどの歌と演奏には入魂の激情、トロトロに甘い誘惑、さらには純粋なブルースの衝動がびっしり散りばめられているんですから、これまた過言では無く、歴史的!
サイケおやじは何時如何なる時に聴いても、これで昇天させられてしまいますよっ!
ところが、それで終わらないのが、このアルバムの素晴らしさです。
ベースがビリー・コックスに交代した「Johnny B. Good」と「Lover Man」の激演は偽りなく大噴火した、これもまた恐怖のジミヘンロック! 特に「Johnny B. Good」におけるギタープレイは基本がシンプルなだけに、その唯我独尊の突進力は時空を切り裂くパワーに満ちています。
もちろんハードファンキー化したブルースロックの「Lover Man」も同様で、もしもこの二連発で何も感じなければ、ジミヘンを楽しむ因子が欠落していると言いきって許されるんじゃ~ないでしょうか。
これは独断と偏見では、決してありません。
ちなみに書き遅れてしましましたが、このアルバムの構成はイギリス盤や日本盤と異なり、このアメリカ盤はAB面が逆になっています。
それゆえにワイト島でのライプテイクから入れられた「The Queen」のスタート前のメンバー紹介が、なかなか自然に置かれた感じがしますし、なによりも最初に手にしたのがアメリカ盤であれば、それに馴染んでいるのも当然なんでしょう。
実はそれからメドレー形式で続く「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」が、中途半端なフェードアウトで終わってしまう事も、だから許せるという側面が……。
そして似たような現象(?)として、ライプステージ本番前のリハーサルテイクと言われている「Blue Suede Shoes」の採用についても、ちょいとした息抜きと思えれば、後は一気呵成にLP片面が楽しめるのですから、アナログ盤の特性を上手く使った編集だと思います。
しかし、このアルバムは当時、発売からしばらくして廃盤に……。
何故かと言えば、前述したとおり、「Little Wing」と「Voodoo Chile」の本当の音源権利所有者から訴えられたからで、その所為でカット盤が市場にどっさり出回ったのも懐かしい現象でありましたが、それゆえにこれほどの名演集が気軽に聴けないという時期もありました。
また、その問題がどうにか解消(?)したのか、1990年頃に出たCDは、非常に音が悪くて、幻滅……。
おまけに現行再発の同タイトルCDは曲数も増えていますが、前述の2曲はオリジナルレコードのロイヤル・アルバート・ホールのテイクでは無いので、これまたオススメ出来ません。
結局、リアルタイムの感動を楽しむためには、このアナログ盤を聴く他はありませんが、それでも2000年に出たCD4枚組ボックスセットには件の2曲が収められていますので、これまた今は廃盤かもしれませんが、要注意だと思います。
ということで、ジミヘンが最もジミヘンらしく楽しめるのが、このアルバムの一番の魅力でしょう。
もちろん生前の正規スタジオ制作盤、あるいはウッドストックやワイト島でのライプを収めたLPや記録映画も言い訳無用の素晴らしさではありますが、ジミヘンが実際に生でギターを弾き、歌っている瞬間風速の感度は絶大なんですねぇ~~。
そのエネルギーの膨大さは決して尽きることがないはずです。
そしてサイケおやじが実演のジミヘンで最高に驚異と思っているのは、歌いながらのギタープレイで、その大技小技の兼ね合いやリフの使い方、千変万化でシャープなリズムプレイ等々、リードやアドリブだけではないギターがここまで使えるという真摯なテクニックであります。
それがこの「イン・ザ・ウエスト」で存分に堪能出来ますので、どうか震えながらお楽しみ下さいませ。
このLover Man版は、ソロの途中でスットコドッコイになりますけど
私は当時(中学一年)から思ってたんですけど、フェンダーって何でずっと21フレットにしたんでしょうね?
出た当時はワカルとしても、変な伝統とかと勘違いしてんじゃないかと憤りを感じてました。
22フレだったらジミもスットコドッコイにならなかったのに。。。と。(´;ω;`)ウウ・・・
(7th#9thと言うんでしょうか)。PUをフロントにして、ジャーカ・ジャッ、とこれを鳴らせば、一発で気分はジミヘン!です。
もちろん、あんな緩急自在のアドリブは弾けないのですが。
先輩ご指摘のとおり、ブルースは器楽でも独唱でもなく、
「弾き語り芸」だと思うのです。ジミヘンはこれが凄いですね。あの音程感のない声も語り芸をやるにはうってつけだと思います。ギターと語りが混然一体となって醸しだすグルーヴ、これだけは白人ミュージシャンには絶対マネ出来ない芸当です。「In The West 」、オリジナルを聴いてみたいものです。
コメントありがとうございます。
フェンダーは頑固さがひとつのウリでしょう。
だから、ある意味での使い勝手の悪さが受け継がれていく電灯的側面があるんじゃ~ないでしょうか?
ちなみにジミヘンであってもライブ音源を聴く限り、そこにはミストーンやリズムのヨレが散見されます。しかしそれを魅力にしてしまうエネルギーが凄いんじゃ~ないでしょうか。
コメントありがとうございます。
ジミヘンのギタースタイルはソロパートの雰囲気は、それなりのコピーアタッチメントで作る音も含めて、なんとかなる瞬間もあります。
しかし弾き語りというか、激しい曲でのリフと歌の両立なんてのは、とてもとても自然には出来ません。そのあたりが、やっぱり真髄かと(!)決めつけてしまうほどですねぇ。