OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

伝承派テナーが好き♪

2007-04-23 19:14:41 | Weblog

さて、スライドバー、抜けました♪

実は小指用に使っていたやつを薬指に付けたのが、悪かったのです……。

ということで、本日は――

Song For Sonny / Oleg Kireyev (Landy Star / Jazzland)

Oleg Kireyev はロシア人らしいサックス奏者で、このCDで聴くかぎり、けっして器用なプレイヤーではありません。

ただ、直向というか、演奏に取り組む姿勢は真摯だし、ツボにハマると豪快に歌いまくるという、なかなかの好人物♪ 中ジャケの写真からのルックスは、ジャッキー・マクリーンを白人にしたようなガンコなコワモテおやじです。

さて、このアルバムは10年ほど前にドイツの露天で買ったもので、ポーランドあたりで作られたものらしく、タイトルどおり、ソニー・ロリンズ(ts) にリスペクトした演奏集です。

録音は1995年3月14~15日、メンバーは Oleg Kireyev(ts,ss)、Joahim Mencel(p)、Arkadi Ovrutski(b)、Kazimierz Jonkiesz(ds) というワンホーン編成です。

ところが、ジャケット記載の曲目・曲順がデタラメなので、ここでは訂正しておきましたが、なかなか魅力的な演目が――

01 As Time Goes By
 おぉ、映画「カサブランカ」を印象的にした、あの名曲♪
 それが正統派テナーサックスで情緒満点に綴られるとあれば、ゾクゾクしないわけにはいきません。リズム隊もムード優先のサポートに撤しています。
 ところが、どっかしら腰が据わっていないというか、若干のふらつきが気になります。しかし本人は必死だと思いますねぇ……。なんか聴いていて、こっちが気をもむというか、妙にせつなくなってしまうのでした。
 否、けっして悪い出来ではなんですよ。Oleg Kireyev は大技・小技を上手く使い分けていますし、ピアノの Joahim Mencel も新しい感覚をいれて健闘しているのですから!

02 Palka Dots And Moonbeames
 お馴染み、美メロのスタンダード曲をボサノバで演じてくれますから、これも和み狙いなんでしょうが、ややリズム隊にシャープさが足りず、主役の Oleg Kireyev もどうしていいのか迷い道……。いやはやなんともです。

03 Secret Love
 ところが一転、面目躍如の快演が、これです。
 素材はスタンダードなんですが、バンドはイントロにジョン・コルトレーン風のイントロを付け、アップテンポで豪快無比な演奏に撤していきます。
 もちろん Oleg Kireyev はソニー・ロリンズ系のハードバップを基本としていますが、適宜、ジョン・コルトレーンも混ぜ込んでの熱演です! リズム隊も強烈な煽りとツッコミで熱風地帯! 実はベースはエレキなんですが、気になることはありません。またドラムスが調子良く、ピアノもハービー・ハンコック~マッコイ・タイナーという雰囲気ですから、たまりません。
 全体に歌心と痛快なノリが満載という仕上がりです。
 
04 Wave
 個人的にもお目当てにしていたボサノバの大名曲なんですが……。
 あぁ、何も書きたくないほどに、トホホです……。
 失礼ながら、このリズム隊はボサノバをわかっているんでしょうか?
 もう何も、書きたくありません……。

05 Tenor Madness
 ソニー・ロリンズの代表的なブルースですから、ここでもノッケからテナーサックスとドラムスの対決で、その場はハードパップ色に染まりきってしまいます。
 Oleg Kireyev のスタイルは、ソニー・ロリンズというよりもジョン・コルトレーン~スティーブ・グロスマン、アーチー・シェップに近くなっていますねぇ。
 続くピアノとドラムスの対決では、ややフリーに足を踏み入れてしまう瞬間までありますが、案外、このあたりにバンドの本性があるのかもしれません。
 最終パートではエレキベース対ドラムスになって、なんかジャコ期のウェザー・リポートになってしまうのは、ご愛嬌♪

06 I Thought About You
 これは、良い!
 雰囲気系スタンダード曲を正統派テナーサックスで見事に吹いてくれます。それはフスススススス~というサブトーンの溜息であり、柔らかで芯のある音色で綴る「歌」の世界であり、メリハリの効いたリズム隊のグルーヴであり、またハードバップならではの和みの時間という、永久不滅の素晴らしさ♪
 あぁ、何度聴いてもシビレます! カタカタとなるテナーサックスのキーの音さえも、魅力的なのでした♪

07 You Don't Know What Love Is
 そして、これがまた素晴らしい!
 ここでの Oleg Kireyev はソプラノサックスに持ち替えていますが、思わせぶりなイントロに続いてテーマの一節を吹いてくれる瞬間から、もうシビレます♪ あぁ、その音色、情感……。なんて素敵なんでしょう。リズム隊の蠢きも秀逸ですし、何よりもバンド全体の息の合い方が絶妙だと思います。
 ちなみに、この曲はスタンダードですが、歴史的にはソニー・ロリンズの決定的な名演が残されていますからねぇ、Oleg Kireyev もソプラノに逃げた事情も分かりますが、それにしても、この演奏は気に入りました♪ ピアノの Joahim Mencel も、「泣き」のフレーズ、幻想的な美メロばっかり弾いています。
 さらに終盤では Oleg Kireyev が本領発揮の素晴らしいアドリブを披露! それはジョン・コルトレーンやウェイン・ショーターの影響を自分なりの血肉としたものでしょう、聴いていて本当に熱くなってしまいます。ドラムスとのインタープレイもバッチリ! 次第にビートが強くなり、グルーヴィに盛り上がっていくのでした。

08 Song For Sonny
 タイトルどおり、ソニー・ロリンズを痛烈に意識したカリプソ系の演奏になっています。もちろん作曲は Oleg Kireyev で、楽しさは最高♪ 聴くほどにニヤリするフレーズや仕掛けが、これまた楽しいところです。

ということで、前半を聴いたかぎりではハズレと思いきや、終盤の3連発があまりにも強烈です。実はそこに「Secret Love」を加えた4曲をメインに聴いているのが、正直なところで、そういう小細工が出来るのもCDの良さでしょうか。

今となっては日本で入手出来るか否か、ちょっと不明ですが、機会があれば聴いてみて下さいませ。

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