さて、スライドバー、抜けました♪
実は小指用に使っていたやつを薬指に付けたのが、悪かったのです……。
ということで、本日は――
■Song For Sonny / Oleg Kireyev (Landy Star / Jazzland)
Oleg Kireyev はロシア人らしいサックス奏者で、このCDで聴くかぎり、けっして器用なプレイヤーではありません。
ただ、直向というか、演奏に取り組む姿勢は真摯だし、ツボにハマると豪快に歌いまくるという、なかなかの好人物♪ 中ジャケの写真からのルックスは、ジャッキー・マクリーンを白人にしたようなガンコなコワモテおやじです。
さて、このアルバムは10年ほど前にドイツの露天で買ったもので、ポーランドあたりで作られたものらしく、タイトルどおり、ソニー・ロリンズ(ts) にリスペクトした演奏集です。
録音は1995年3月14~15日、メンバーは Oleg Kireyev(ts,ss)、Joahim Mencel(p)、Arkadi Ovrutski(b)、Kazimierz Jonkiesz(ds) というワンホーン編成です。
ところが、ジャケット記載の曲目・曲順がデタラメなので、ここでは訂正しておきましたが、なかなか魅力的な演目が――
01 As Time Goes By
おぉ、映画「カサブランカ」を印象的にした、あの名曲♪
それが正統派テナーサックスで情緒満点に綴られるとあれば、ゾクゾクしないわけにはいきません。リズム隊もムード優先のサポートに撤しています。
ところが、どっかしら腰が据わっていないというか、若干のふらつきが気になります。しかし本人は必死だと思いますねぇ……。なんか聴いていて、こっちが気をもむというか、妙にせつなくなってしまうのでした。
否、けっして悪い出来ではなんですよ。Oleg Kireyev は大技・小技を上手く使い分けていますし、ピアノの Joahim Mencel も新しい感覚をいれて健闘しているのですから!
02 Palka Dots And Moonbeames
お馴染み、美メロのスタンダード曲をボサノバで演じてくれますから、これも和み狙いなんでしょうが、ややリズム隊にシャープさが足りず、主役の Oleg Kireyev もどうしていいのか迷い道……。いやはやなんともです。
03 Secret Love
ところが一転、面目躍如の快演が、これです。
素材はスタンダードなんですが、バンドはイントロにジョン・コルトレーン風のイントロを付け、アップテンポで豪快無比な演奏に撤していきます。
もちろん Oleg Kireyev はソニー・ロリンズ系のハードバップを基本としていますが、適宜、ジョン・コルトレーンも混ぜ込んでの熱演です! リズム隊も強烈な煽りとツッコミで熱風地帯! 実はベースはエレキなんですが、気になることはありません。またドラムスが調子良く、ピアノもハービー・ハンコック~マッコイ・タイナーという雰囲気ですから、たまりません。
全体に歌心と痛快なノリが満載という仕上がりです。
04 Wave
個人的にもお目当てにしていたボサノバの大名曲なんですが……。
あぁ、何も書きたくないほどに、トホホです……。
失礼ながら、このリズム隊はボサノバをわかっているんでしょうか?
もう何も、書きたくありません……。
05 Tenor Madness
ソニー・ロリンズの代表的なブルースですから、ここでもノッケからテナーサックスとドラムスの対決で、その場はハードパップ色に染まりきってしまいます。
Oleg Kireyev のスタイルは、ソニー・ロリンズというよりもジョン・コルトレーン~スティーブ・グロスマン、アーチー・シェップに近くなっていますねぇ。
続くピアノとドラムスの対決では、ややフリーに足を踏み入れてしまう瞬間までありますが、案外、このあたりにバンドの本性があるのかもしれません。
最終パートではエレキベース対ドラムスになって、なんかジャコ期のウェザー・リポートになってしまうのは、ご愛嬌♪
06 I Thought About You
これは、良い!
雰囲気系スタンダード曲を正統派テナーサックスで見事に吹いてくれます。それはフスススススス~というサブトーンの溜息であり、柔らかで芯のある音色で綴る「歌」の世界であり、メリハリの効いたリズム隊のグルーヴであり、またハードバップならではの和みの時間という、永久不滅の素晴らしさ♪
あぁ、何度聴いてもシビレます! カタカタとなるテナーサックスのキーの音さえも、魅力的なのでした♪
07 You Don't Know What Love Is
そして、これがまた素晴らしい!
ここでの Oleg Kireyev はソプラノサックスに持ち替えていますが、思わせぶりなイントロに続いてテーマの一節を吹いてくれる瞬間から、もうシビレます♪ あぁ、その音色、情感……。なんて素敵なんでしょう。リズム隊の蠢きも秀逸ですし、何よりもバンド全体の息の合い方が絶妙だと思います。
ちなみに、この曲はスタンダードですが、歴史的にはソニー・ロリンズの決定的な名演が残されていますからねぇ、Oleg Kireyev もソプラノに逃げた事情も分かりますが、それにしても、この演奏は気に入りました♪ ピアノの Joahim Mencel も、「泣き」のフレーズ、幻想的な美メロばっかり弾いています。
さらに終盤では Oleg Kireyev が本領発揮の素晴らしいアドリブを披露! それはジョン・コルトレーンやウェイン・ショーターの影響を自分なりの血肉としたものでしょう、聴いていて本当に熱くなってしまいます。ドラムスとのインタープレイもバッチリ! 次第にビートが強くなり、グルーヴィに盛り上がっていくのでした。
08 Song For Sonny
タイトルどおり、ソニー・ロリンズを痛烈に意識したカリプソ系の演奏になっています。もちろん作曲は Oleg Kireyev で、楽しさは最高♪ 聴くほどにニヤリするフレーズや仕掛けが、これまた楽しいところです。
ということで、前半を聴いたかぎりではハズレと思いきや、終盤の3連発があまりにも強烈です。実はそこに「Secret Love」を加えた4曲をメインに聴いているのが、正直なところで、そういう小細工が出来るのもCDの良さでしょうか。
今となっては日本で入手出来るか否か、ちょっと不明ですが、機会があれば聴いてみて下さいませ。