もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 062 米原万里「米原万里の「愛の法則」」(集英社新書:2007) 感想4+

2015年03月17日 23時18分03秒 | 一日一冊読書開始
3月17日(火):

188ページ  所要時間 3:25   アマゾン258円(1+257)

著者没後出版(1950~2006;56歳)。

著者の亡くなった後、生前の4つの講演記録を書き起こしてまとめたもの。原著群に比べると、やや薄口感と既視感は否めないが、やはり良い。著者が、ロシア文学だけでなく、日本文学についても恐るべき読書家であり、良い通訳者になるための条件は、両方の文学の達人になることであり、もう一つ、母語と英語と第三外国語の素養が絶対に必要だ。通訳界では、英語が90%に、英語以外の言語が10%だが、英語の通訳たちが数の割には一番面白くない連中である。英語以外の通訳は、みな面白い人間が多い。彼らは専門の言語以外に、必ず英語ができる。母語と専門言語と英語の三角形が、英語及び英語世界を相対化できるからだ。

 チェコ・プラハのロシア語学校の授業では、読書で「感想」を聴かれることは全く無かった。それより呼んだ作品の「梗概・内容」を再現説明することを常に求められた。感想は要らないが、読んだ作品の内容を必ず説明することを求められることが読書を立体的なものにした。

 語学上達の方法として、単語をその都度調べる方法を否定し、自分が面白いと思う作品をできる限り辞書を引くことなく文脈で想像することを最大限重視して作品を最初から終わりまで読み切る経験をこなしていく。20%ぐらいの単語がわからなくても、物語の梗概は分かる。それを繰り返していくことによって、作品をとにかく読み切る経験を重ねていくことによって上達を目指すのが、語学学習の遠回りに見えて、最短の王道なのだ。

 通訳になる場合も、単語にこだわっていては通訳にはなれない。むしろコンテキストを重視して、単語の意味以前に存在する意味そのものをつかむようにすることが最も重要である。逐一の単語の意味に拘り、強迫的に逐語訳することを目指す者は通訳者になれない。 

【目次】第1章 愛の法則(世界的名作の主人公はけしからん!/もてるタイプは時代や地域で異なる ほか)/第2章 国際化とグローバリゼーションのあいだ(「国際」は国と国とのあいだ/国を成立させる要素 ほか)/第3章 理解と誤解のあいだー通訳の限界と可能性(同時通訳は神様か悪魔か魔法使い?!/濡れ場の多いベストセラー小説『失楽園』 ほか)/第4章 通訳と翻訳の違い(言葉を相手にする通訳と翻訳/小説を楽しめる語学力があれば通訳になれる ほか)

表紙裏紹介文:稀有の語り手でもあった米原万里、最初で最後の爆笑講演集。世の中に男と女は半々。相手はたくさんいるはずなのに、なぜ「この人」でなくてはダメなのか―“愛の法則”では、生物学、遺伝学をふまえ、「女が本流、男はサンプル」という衝撃の学説!?を縦横無尽に分析・考察する。また“国際化とグローバリゼーション”では、この二つの言葉はけっして同義語ではなく、後者は強国の基準を押しつける、むしろ対義語である実態を鋭く指摘する。四つの講演は、「人はコミュニケーションを求めてやまない生き物である」という信念に貫かれている。
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