もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

190807 山田洋次監督「母と暮らせば」(2015)感想5

2019年08月08日 00時54分34秒 | 映画・映像
8月8日(水):  

原爆で息子を亡くした母(吉永小百合)のもとに息子が戻ってくる物語り。周囲からは奇異な目で見られることもあるが、悲しみを抱えながら亡くなった息子とのやり取りは救済でもある。むごくて残酷な境遇にある母親に可能な限りの優しさをほどこした物語である。しかし、息子二人、上の子をビルマで、下の子を長崎の原爆で喪った母は少しずつ衰弱していくしかない。下の子の婚約者で、小学校教員になっていた誠実な女性が新しい婚約者を義母となったはずの母のもとに紹介に訪れる。祝福をしながらも息子が生きていればと理不尽な運命を思わずにいられない母。その夜、現れた息子に導かれて母は天に召される。

最後のシーンで涙が気持ちよく流れた。そのシーンを何度も何度も見返した。年を取ると、厳しいシーンやカッコよさで涙は流れないが、優しいシーンや思いやりのあるシーンで簡単に涙があふれる。

子どもを喪った母の取り返しのつかない悲しみ、原爆さへなければ生きられた息子の無念さ、悲しみが伝わってくる映画だった。この世で最も納得のできない理不尽なことが戦争と核兵器だ。反戦・反核はイデオロギーを超えた最重要課題だ。母親という存在も理屈を超えた存在、生命体そのものだ。母親を悲しませる世の中を作ってはいけない。吉永小百合さんは、やはり別格の女優さんである。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。