8月17日(金):
603ページ 所要時間4:00 ブックオフ108円
著者46歳(1960生まれ)。起訴休職外務事務官・作家。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、1995(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受け、現在上告中。主な著書に『国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(新朝ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)などがある。
今日は、終日だらだらとテレビを付けたり、コミック「ヒカルの碁」シリーズを読み続けたり、食っちゃ寝を繰り返していた。そのせいで夜になって、いつになく心理的に後ろめたさが強くなり、反面中途半端な体力が余っていた。昨日ブックオフで偶然手に入れた本書を手にしてその気になった。603ページという大分さがかえって「これならまともな読書は無理で、1ページ15秒読書を割り切ってできる」という気にさせてくれた。
150ページを超えた辺りで微かな既視感を覚えた。確認済みの本棚をもう一度念入りに調べると、本棚の天上に載せられる形で置かれた本書の単行本を見つけた。しかも日付は2018年1月7日で、半年ちょっと前に目を通していたのだ。一瞬読むのを止めようかと思ったが、忘却の度合いの大きさに呆れながら、ここでもかえって「だから見直してもいいってことかな」と思い返して続けた。
本書に対して、1ページ15秒読みでは、正直読んだとも、読めたとも言い難く、ただ眺めて雰囲気を味わったという程度である。膨大な付箋をしたが、それとても適切というよりは、少し気になった程度のところに逡巡なく張っていったという程度のものである。15秒で収まるようにページに視点を上下させているだけとも言える。
しかし、それでもあまり迷子になることなく、一気呵成に4hノンストップで最後まで目を這わせ続けることができたのは、ひとえに著者の文章力というほかはない。抽象的な思想に関わる部分も多い作品であるにもかかわらず、表現が明晰で分かりやすく、映像的・具体的なイメージを喚起しやすかったのだ。そして、大きくて、広くて、深くて、動きがあって、何よりも面白かったのだ。
同志社大学神学部卒業でプロテスタンティズム・キリスト教神学という最も”非生産的”<教養>を身に着けた外務官僚の著者が、ゴルバチョフからエリツィンに至るソビエト社会主義共和国連邦の崩壊という動乱の時代のソ連・ロシアを舞台にして、ノンキャリアの駐在外交官として大活躍をして見せる痛快さは例えようがない。
社会全体が、目先のすぐに役立つ知識・技術ばかりに目を奪われて、完全に<教養>が廃れ切ってしまった浅ましい現代日本にあって、役に立たない<教養>の代表ともいうべきキリスト教”神学”が、これほど役に立つ光景を見せられると、「やっぱり、これが本当の学問の姿だよな。<教養>こそが生きる原動力だよな」と再認識させてくれて、ほっと安堵させてくれる。
特に、1991年8月のゴルバチョフ誘拐、クーデター失敗の三日間前後の記述は、眺め読みであっても迫力満点だった。
本書は、前回読んだ単行本には無かった「文庫版あとがき――帝国は復活する(70ページ)」と、恩田陸「解説(7ページ)」が付け加えられていた。特に「佐藤優という人がいきなり完成された形で思いもよらぬところから現れ、書くもの書くものが面白く、あっというまに出版・言論界を席巻するのを目にした時、私は奇妙な感想を持った。」で始まる恩田陸の「解説」は、短いけれど全部がそのまま読了後の今の俺の思いを文字にしてくれた印象の内容だった。
【目次】序章 「改革」と「自壊」/第1章 インテリジェンス・マスター/第2章 サーシャとの出会い/第3章 情報分析官、佐藤優の誕生/第4章 リガへの旅/第5章 反逆者たち/第6章 怪僧ポローシン/第7章 終わりの始まり/第8章 亡国の罠/第9章 運命の朝/文庫版あとがき――帝国は復活する(70ページ)/恩田陸「解説(7ページ)」
【内容情報】ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そしてゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていた。ソ連邦消滅という歴史のおおきな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。大宅賞、新潮ドキュメント賞受賞の衝撃作に、一転大復活を遂げつつある新ロシアの真意と野望を炙り出す大部の新論考を加えた決定版。
603ページ 所要時間4:00 ブックオフ108円
著者46歳(1960生まれ)。起訴休職外務事務官・作家。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、1995(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受け、現在上告中。主な著書に『国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(新朝ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)などがある。
今日は、終日だらだらとテレビを付けたり、コミック「ヒカルの碁」シリーズを読み続けたり、食っちゃ寝を繰り返していた。そのせいで夜になって、いつになく心理的に後ろめたさが強くなり、反面中途半端な体力が余っていた。昨日ブックオフで偶然手に入れた本書を手にしてその気になった。603ページという大分さがかえって「これならまともな読書は無理で、1ページ15秒読書を割り切ってできる」という気にさせてくれた。
150ページを超えた辺りで微かな既視感を覚えた。確認済みの本棚をもう一度念入りに調べると、本棚の天上に載せられる形で置かれた本書の単行本を見つけた。しかも日付は2018年1月7日で、半年ちょっと前に目を通していたのだ。一瞬読むのを止めようかと思ったが、忘却の度合いの大きさに呆れながら、ここでもかえって「だから見直してもいいってことかな」と思い返して続けた。
本書に対して、1ページ15秒読みでは、正直読んだとも、読めたとも言い難く、ただ眺めて雰囲気を味わったという程度である。膨大な付箋をしたが、それとても適切というよりは、少し気になった程度のところに逡巡なく張っていったという程度のものである。15秒で収まるようにページに視点を上下させているだけとも言える。
しかし、それでもあまり迷子になることなく、一気呵成に4hノンストップで最後まで目を這わせ続けることができたのは、ひとえに著者の文章力というほかはない。抽象的な思想に関わる部分も多い作品であるにもかかわらず、表現が明晰で分かりやすく、映像的・具体的なイメージを喚起しやすかったのだ。そして、大きくて、広くて、深くて、動きがあって、何よりも面白かったのだ。
同志社大学神学部卒業でプロテスタンティズム・キリスト教神学という最も”非生産的”<教養>を身に着けた外務官僚の著者が、ゴルバチョフからエリツィンに至るソビエト社会主義共和国連邦の崩壊という動乱の時代のソ連・ロシアを舞台にして、ノンキャリアの駐在外交官として大活躍をして見せる痛快さは例えようがない。
社会全体が、目先のすぐに役立つ知識・技術ばかりに目を奪われて、完全に<教養>が廃れ切ってしまった浅ましい現代日本にあって、役に立たない<教養>の代表ともいうべきキリスト教”神学”が、これほど役に立つ光景を見せられると、「やっぱり、これが本当の学問の姿だよな。<教養>こそが生きる原動力だよな」と再認識させてくれて、ほっと安堵させてくれる。
特に、1991年8月のゴルバチョフ誘拐、クーデター失敗の三日間前後の記述は、眺め読みであっても迫力満点だった。
本書は、前回読んだ単行本には無かった「文庫版あとがき――帝国は復活する(70ページ)」と、恩田陸「解説(7ページ)」が付け加えられていた。特に「佐藤優という人がいきなり完成された形で思いもよらぬところから現れ、書くもの書くものが面白く、あっというまに出版・言論界を席巻するのを目にした時、私は奇妙な感想を持った。」で始まる恩田陸の「解説」は、短いけれど全部がそのまま読了後の今の俺の思いを文字にしてくれた印象の内容だった。
【目次】序章 「改革」と「自壊」/第1章 インテリジェンス・マスター/第2章 サーシャとの出会い/第3章 情報分析官、佐藤優の誕生/第4章 リガへの旅/第5章 反逆者たち/第6章 怪僧ポローシン/第7章 終わりの始まり/第8章 亡国の罠/第9章 運命の朝/文庫版あとがき――帝国は復活する(70ページ)/恩田陸「解説(7ページ)」
【内容情報】ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そしてゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていた。ソ連邦消滅という歴史のおおきな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。大宅賞、新潮ドキュメント賞受賞の衝撃作に、一転大復活を遂げつつある新ロシアの真意と野望を炙り出す大部の新論考を加えた決定版。