もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 048 立花隆「脳を鍛える 東大講義「人間の現在」」(新潮文庫:2000(1996)) 感想5

2015年02月26日 01時49分02秒 | 一日一冊読書開始
2月25日(水):

526ページ  所要時間 4:40    ブックオフ108円

著者60歳(1940生まれ)。言わずと知れた知の巨人。本書では、著者の理数系方面に対する力量に驚かされた。

俺は著者が披歴してくれる壮大な知の世界が本当に好きだ。しかし、普通に読んだのでは、時間的にも、根気でも読み通せない。<縁結び読書>のつもりで、1ページ15秒読みに取り組んだ、結局後半ペースは崩れたが、いずれにせよ4:40で太刀打ちできる内容ではない。だからと言って、倍以上の10hを書けたら理解が深まるかと言えば、そういうものでもない。本書の内容は、基本的に理数系二大きく比重が載っている。15秒読みの読み取り能力の限界もあって感想を4+に仕掛けたが、理解できなくても壮大な知の世界にたゆたえて面白いというのが著者の真骨頂だ。知の巨人である著者のコンテンツの充実ぶりと柔軟で実のあるものの考え方への共感を考えれば、理解できないとは言え、最後のページまで目を這わせることができ、多くの雑学、多くの論理に触れ、それなりの知恵と知識が自分の中に残せたのだから、やはり5ということにした。

本書は、1996年(著者56歳)東大教養学部での夏学期授業を雑誌連載したものをベースにまとめた内容である。東大生たちの受験頭を「使いものにならない」「気位だけ高い東大卒のできそこないは始末に負えない」とさまざまな視点から指摘し、「大学の4年間は本当に短い」「使える脳」を自分で創り上げるために危機感を持って全力で学問に取り組め、と励ます。「人間二〇歳を過ぎたら自分の脳には自分で責任を持てといいたい」。

一方、受験制度の問題もあって、理数系と文科系が完全に乖離している状態に警鐘を鳴らし、両方の教養の必要性を強く求める。

本書の内容は、全く古くなっていない。瑞々しさが維持されている。たとえば、第7回~第11回の文系と理系の乖離への警鐘から、相対性理論、素粒子論、パリティ非保存説による対称性の破れ、6種類のクオーク(アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップ)の紹介の話は、約10年後の南部・小林・益川博士たちのノーベル物理学賞受賞の意味を理解する上で圧巻の解説になっていた。勿論、俺は数式など全く理解できないが十分に興味深く読めた。

*ヴァレリー、マラルメ、エラスムス、C・P・スノー「二つの文化と科学革命」、T・H・ハックスレー、オルダス・ハックスレーの『すばらしい新世界』(1932)は、オーウェルの『一九八四年』よりもずっとすごい!

*西欧語で無神論atheism(エイシズム)、無神論者atheist(エイシスト)なんて、軽はずみに使ってはいけない。「不可知の;不可知論者」agnostic(アグノスティク)を使うべし! ex. I'm agnostic. で良い!

*脳を鍛えるためには、「ホントにそうか?」の疑問を持つことが大切である。

目次: コピペではない!
はじめに―開講にあたって、二、三の事柄
第1回 環境、私、宇宙/「はじめて体験」を前にしたきみたちに/三つのフェーズで考える/日本の理科教育の水準は十九世紀以前だ/知の構造変化がすべてを動かす
第2回 大学は知の拡大再生産過程の最前線/きみたちはまだ何者でもない/自分の脳は自分で作れ
第3回 アインシュタインの脳を分析したら/前頭葉にこそ人間は宿る/脳にとっての「いい」環境
第4回 授業はサボるためにある/わからないものこそ読んでみろ/小林秀雄もたじろいだ/正確という烈しい病/R夫人への愛がヴァレリーを生んだ?/二〇代の青年に、パラダイムの大転換が突然訪れた/権威を疑え
第5回 学生時代のノートから/学生時代のノートから/精神の革命、ルネサンス/自分のタイプを見つけろ
第6回 辞典をまるごと読んでみる/辞典をまるごと読んでみる/留年のススメ/教養とはリベラル・アーツ
第7回 このままじゃ、日本の「知」はダメになる/サイエンスとテクノロジーのリテラシー/マクロな視点からそうたいを眺めてみれば
第8回 世界はすべてエネルギーの流れ/自己組織化原理は発見されるか/ケンブリッジの夕食会
第9回 時間と空間の観念を覆したスーパー理論/相対性理論を武器に自然の秘密に迫る/宇宙の根本原理とは
第10回 世界の見方がすっかり変った/常識の壁を打ち破る/恩師に反旗を翻す/地球も砂糖粒も対照的にできている
第11回 対称性とはどういうものか/若き中国人科学者の挑戦/対称性の破れが世界を創った
第12回 百科事典に載る家系/覚えておくと便利な一言/小説家と脳医学者
文庫版あとがき
付録 『環境ホルモン入門』「はじめに」より抜粋/『二十歳のころ』「はじめに」より抜粋

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