もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 107 宮崎学「続・突破者」(同時代社:2010)感想 特5

2018年08月16日 01時41分22秒 | 一日一冊読書開始
8月15日(水):       

308ページ     所要時間11:15     古本市場86円

著者65歳(1945生まれ)。京都府生まれ。父は伏見のヤクザ寺村組組長。早稲田大学在学中は日本共産党・民青系のゲバルト部隊に属す。「週刊現代」記者を経て、実家の建築解体業を継ぐ。1996年にそれらの体験を描いた『突破者』で作家デビュー

20年近く昔?、著者51歳での処女作「突破者 戦後史の陰を駆け抜けた五〇年」(南風社:1996)を定価購入で?、熱狂的に読んだ記憶があった。その続編を古本屋で見つけ、反射的に購入、そしてそのまま読破ということになった。

前作は戦後50年の著者の歩みを戦後史に重ね合わせて、圧倒的な説得力で読まされたという記憶だけがある。こちらも近日中にもう一度読み返したい気持ちがある。本作は、前作の続編として1995年から後の15年間を扱っていることになる。ただ内容は、それ以上で、現代の日本政治・社会の有り様に対する著者の非常に独自性の高い、かつ説得力のある批判・批評となっている。

本書は、読み手を選ぶ内容の本だ、と思う。歴史や社会をうわべでしか見ようとしない差別者予備群には、本書はすぐに放り出してしまう内容だろう。それを俺は、終盤まで来て、もう一度始めから読み直して、計11h15mかけて読み上げた。だからと言って本書の内容を十二分に理解できたという気はないが、途中で読むのをやめようとは全く考えなかった。そして、少し迷ったが、感想を”特5”とした。

当「もみさん」のサイト訪問者には、”俺=もみさん”がどのような価値観、知識、何でもよいが、どういうものの考え方の持ち主か?を理解してもらうよすがになる、と思う。俺は、この本の内容を掛け替えのないテキストと考える人間なのである。

本書の内容を説明する能力も時間もないので簡単な感想を述べておく。まず、著者は自らをやくざの親分の息子、京都の被差別出身、元共産党ゲバルト部隊で、違和感から脱党者となったと規定している。また、グリコ・森永事件で誤認逮捕されたキツネ目の男として世に出て以後、インターネット上で「電脳キツネ目組」という横のつながりを重視する愚連隊組織を結成している。この”組”は、さまざまに活動を展開している。

次に本書の内容は、すべてがとは言わないが、俺には半端なく面白かった。単なる知識ではなく、言葉に張りがあり、血が通って生きている智慧の書である。新聞・テレビをいくら読んでも、見ても決して伝えられることのないニュースや出来事の<裏の顔>がよく見えてくる。読後、俺自身の世の中を観る目が確実に変わっている。俺自身の日本社会・世間に対する座標軸を独自に作り上げるのに間違いなく資する内容であった。

被差別に対する差別問題に取り組む戦後の運動史では、社会党系の解放同盟共産党・全解連の対立が最も理解しにくく、風通しが悪い。著者は、元共産党ゲバルト部隊から離脱し、「突破者」を出版後、解放同盟からの依頼で「近代の奈落」(解放出版社:2002 ※俺は所有してる!)を出版しつつ、解放同盟に対しても一定の批判をして距離をとっている。

絶妙な立場から非常に分かりやすく(でもわかりにくいが…)、解放運動のプラス面、マイナス面を納得できるように説明してくれている。何よりも、外側から訳知り顔で小賢しく説明するのではなく、実際に実践の痛みを伴いながら内部から観た形で説明をしてくれているのだ。今、見えにくくなっている差別の現状についてもわかりやすく言及しており、本書は実(じつ)があり、かつわかりやすい「現代被差別論」をなしている面をそなえている。

現代社会を理解する上で、池上彰さんでは超えられない現代社会の<裏の顔>を本書でかなり押さえることができる。本書の内容を理解する上で、本書に出てくる実名の人々(野中広務、佐高信、大谷昭宏、呉智英、姜尚中、梁石日、角岡伸彦、佐藤優、鈴木宗男、平野貞夫、辛淑玉、上田卓三、ほか多数)との交流も著者の生きざまの深さを知るよすがになると思う。

少し限界です。寝ます。また何かあったら書きます。

【目次】1 電脳突破党始末記/2 俺たちの政治/3 正義と闘う/4 風、雲を呼ぶ亜細亜の大地/5 差別の闇を裂く/6 最後に

【内容情報】「正義」をかざすインチキ漢、脱獄計画で著者を助けた闇の将軍、どうにも手が付けられないアホ、清く正しい市民の群れ、刑務所で出会った男と女…。奈落の闇を、著者は野蛮の声をあげて泳いできた。孤立を怖れず、進むほかないだろう。

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