もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

6 047 柳沢幸雄「なぜ、中高一貫校で子どもは伸びるのか」(祥伝社新書:2015) 感想4

2017年04月11日 21時17分49秒 | 一日一冊読書開始
4月11日(火):  

183ページ    所要時間3:05     図書館→アマゾンに注文355円(98+257)

著者68歳(1947生まれ)。東京大学名誉教授、開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部卒業。システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)入社。1974年退社、東京大学大学院工学系研究科修士課程進学。同博士課程修了、工学博士。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授(在任中ベストティーチャーに選出)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年より現職。

本書の評価は、見る角度によって変わるだろう。一般的な教育現場の困難さ、多様さを前提に読めば、「現実を知らずに何を言ってやがるんだ」と言い捨てることもできるだろう。しかし、一方で開成中学校・高等学校生という家庭的にも、能力的にもチョー恵まれた選りすぐりの子どもたちを基にして語ることで通常の教育現場では語り切れない話が聴けるとも言える。すなわち、整えられた優秀な子供たちの集団でしか語れない「チョー純粋な<教育>談義である。その上、語り手の著者の経歴も能力も申し分ない。

なかなか聴けない話を素直に拝聴する気で読めば、本書の内容はよく整理されていて、非常に納得のいくものである。なぜ中高一貫校、しかも私立校(公立に比べて、非常に校風が個性的なので注意が必要!)が優れているのかが、「開成」という超進学校(だけど現実に存在する学校)を舞台に語られている。著者は、中学進学後の「子どもの親離れ」以上に、「(母)親の子離れ」と「子どもの自律(自立)」を力説する。さらに、欧米の大学留学なども材料にして、大学受験の意味自体が問い直されている。

読んでいて付箋だらけになったので、アマゾンで購入することにしたが、要するに著者は中高一貫校を年齢差5歳の幅広い子ども同士が刺激し合える”ミニ大人社会”と捉え、それが勉強面以外でも子供を成長させる。結局、”環境”が一番大事なのだと言っている。

素直に中身を受け止めて、いろいろと考えながら読んで、俺は素直に面白いと思った。多少の潤色、加工は施されているかもしれないが、他所ではなかなか聞けない話(講演)を聴講できた気分である。

【目次】序章 中学生から、教育は変わる/第1章 なぜ、中高一貫校で伸びるのか?/第2章 勉強法/第3章 課外活動/第4章 親の役割/第5章 大学受験と進路選択

【内容情報】日本の教育制度は今、大きく変わろうとしている。小中一貫、中高一貫、高大連携など、制度上の切れ目を解消する試みが進められているのだ。しかし、海外も含め、長い伝統と実績を誇る中高一貫校こそ、子どもを伸ばす最良の環境である。自らも中高一貫校に学び、母校・開成学園の校長に就任した著者は、そう断言する。では、なぜ伸びるのかー。本書では開成学園の実践例も織り交ぜながら、勉強法、課外活動、進路選択から親の役割にまで言及。その具体的な記述は、中高生の子を持つ親の指針となるだろう。受験教育より、生徒の自主性を育む開成学園が成果を上げ続ける理由も、まさにそこにあるのだ。
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