もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 102 佐々木正美「子どもへのまなざし」(福音館書店:1998)感想特5

2018年07月26日 00時40分01秒 | 一日一冊読書開始
7月25日(水):  

324ページ      所要時間6:05      ブックオフ200円

著者63歳(1935~2017:81歳)。児童精神科医。

あまり余裕がないので、簡潔に書く。数日前の晩、幼い息子に少し「キレ」て、厳しい態度をとってしまい、我知らず本棚の本書を読み始めた。そうしたら、ますます落ち込んでしまった。しかし、こういう気付きがなければ、かけがえのない息子との関係を見失ってしまうところだった。

本書は、理屈云々を超えたところにある本である。『聖書』まさに<福音のような内容>であり、読むこと自体が<祈り>であり、<懺悔>になった気がする。乳幼児期に与えられた人間と社会への信頼感が、その人間の人生を決定するほどの影響力を持つ。著者のまなざしはあくまでも子どもの立場に立っているが、同時に「幸せな親によってしか、子どもを幸せに育てられない」という時に絶望的に響く厳しい観点から、「子どもよりもあえて親の幸せを優先する」とも語っている。

読んでいて、何度も期待を裏切られるようなことが書かれていた。親や保育士・幼稚園教員をはじめ子供に関わる大人に対して根本的な考え方の変革を求める内容が記されていて「はっ!?」とさせられるのだ。ある時には、本書の内容のが重松清の作品と重なり、「とんび」のやっさんが立ち現れて戸惑った。内容が非常に良識的でありかつ、優しさに満ちているからだろうと思った。

本書は、テキストであり、付箋をたくさんしたので、今後折にふれて何度も読み返そうと思う。これから読んでみようと思う人には、お子さんが乳幼児の内に読まれることを勧める。ただ、本書は児童書の枠を越えて、人間観・哲学の領域に入っているので、子どもの有無にかかわらず人生について、社会について考えるよすがになると考える。

【目次】乳幼児期は人格の基礎をつくるとき/子どもをとりまく社会の変化/人と育ち合う育児/こんな気持ちで子育てを/生命との出会い/乳児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ/子どもの望んだことを満たしてあげる/幼児期は自立へのステップの時期/しつけはくり返し教えること、そして待つこと/思いやりは身近な人とともに育つ/子ども同士の遊びのなかで生まれるもの/友達と学び合う時期/思春期は自分さがしの時期/豊かな社会がもたらしたもの/保母さん、幼稚園の先生へ/お母さんへ、お父さんへ

【内容情報】*子どもにとっての乳幼児期は、人間の基礎をつくるもっとも重要な時期です。児童精神科医の著者が、臨床経験をふまえて乳幼児期の育児の大切さを語る、育児に関わる人の必読書です
*乳幼児期は人間の基礎を育てる大切な時期だと、乳幼児期の子育てに重点を置いている1冊。 著者は30年以上、子どもの臨床に携わってきた。さらに診察室だけではなく、保育園や幼稚園、学校、児童相談所、養護施設、家庭裁判所などさまざまな場所で数多くの子どもや親に出会ってきた。 社会の変化に伴い、育児方法や育児の考え方は大きく変化した。育児不安を持つ母親はますます増加し、近年問題になっている過干渉や放置、虐待など、社会のゆがみは、そのまま子育てに影響している。著者は、子どものありのままを受け止めることが大切だと強調する。十分な受容や承認を受けた子どもは、安心して社会に出ることができる。子どもにとって、最大のサポーターであり、理解者であるのが親なのだ、と。育児の喜びは、子どもに期待できる喜び、子どもを幸せにできる喜びの二つあると著者はいう。そして、子どもの笑顔や喜ぶ姿に、自分自身が喜べる親であってほしいと願う。 自分が望んだとおりに子どもが育つ姿を見て、満足する。そういう「条件つきの愛」ではなく、無条件に子どもを愛することの大切さは、きっとだれでもわかっていることなのだろう。本書に書かれていることは、ごくごくあたりまえのことばかりだ。しかし、忙しい毎日に追われ、そんなあたりまえのことをつい忘れてしまいがちになる。本書は、自分の子育てをあらためて見つめ直すきっかけになりそうだ。(町場キリコ)

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