3月20日(火):
133ページ 所要時間4:30
30年前の本。紙は完全に劣化して黄ばんでしまっている本棚の肥やし。折に触れて、所要時間1時間程度の流し読みは繰り返してきている。十分な時間をかけて読み込んだのは、今回が初めてか?
「1982年10月から1983年3月まで、半年間毎週45分の全25回の講義番組テキスト」。評価3は、「教科書の評価は難しい」の一言に尽きる。専門家の目から見れば、恐らくもう手に入らない<垂涎の書>だと思う。ただ、日々の読書の対象として読みこなすのは、それなりに大変で苦しい。読み通せたのは、やはり「太平記」の時代世界と、登場する人々の魅力であった。
「『太平記』は四〇巻の大作です。『平家物語』でも十二巻、軍記文学の中ではいうまでもなく、日本文学の歴史の中でもっとも大きな作品の一つです。何しろ半世紀にわたる内乱(*)を対象にした、登場人物の総数も2,200人という厖大な作品ですから、云々」
(*)文保2年(1318)の後醍醐天皇即位から、貞治6年(1367)室町幕府二代将軍足利義詮の死去、三代将軍足利義満就任と細川頼之管領就任までの半世紀間。
大学生の時、一念発起して、「中公文庫版・日本の歴史(全26巻)」の読破に挑戦したことがあり、1巻~20巻までで挫折した。その時、第9巻『南北朝の動乱』(佐藤進一)が、飛び抜けて面白かった記憶がある。とにかく「なんだこりゃ!」と、あまりの荒唐無稽・混沌ぶりにびっくりしたのだ。なんせ、軍事的にも政治的にも圧倒的に微弱・非力な南朝が短期間とはいえ、4回も京都を奪還したりするのだ。重ねて、「なんなんだこりや!」である。戦国や幕末が面白いのは当たり前だが、それ以外でこんなに面白い時代が日本史にあったというのは、ちょっとしたカルチャーショックだった。
ダメ押しは1991年NHK大河ドラマ「太平記」放送である。勿論、吉川英治『私本・太平記』(全8巻)で予習は万全である。まず、NHK制作陣の勇気ある決断を褒め称えたい。なんせ戦前だが、足利尊氏を少し前向きに評価した国務大臣が「逆臣を褒めるとは何事ぞ!」と簡単に、その首を飛ばされた歴史を持つ国である。当時俺は「よくぞやってくれた!」と賞讃していた。また、キヤストが最高に良かった! ある意味、これ以上は考えられない奇跡的なキャストだった。間違いなく歴代大河ドラマトップ3に入る出来栄え!だった。
当時、兄との関係がうまくいっていなかった俺にとっては、尊氏と直義の関係の変化は、もう気持ちが入り込んでしまって、作品世界に完全にのめり込んでしまった。そして、満足していた。直義役の高島政伸が、毒を飲まされ、瀕死の息の中で尊氏役の真田広之と抱き合って、「(それでこそ)兄上は、大将軍じゃ」と言ってこと切れる。残された尊氏が「弟を殺した―…、母上―…」と天に向かって叫ぶシーンには、もう言葉は要らない。そのシーンを只管目に焼き付けていた。
すみません、本書の内容について、何も述べられてませんよね。とにかく、この書は、太平記関係では、垂涎の書ですよ。内容は、云々する以前の素晴らしい本です。
目次:
第1章 『太平記』の課題
1『太平記』の魅力―軍記文学の系譜/2『平家物語』と『太平記』/3『太平記』と史実/4『太平記』の構想
第2章 『太平記』の展開
1後醍醐天皇と護良親王/2楠 正成(1)/3楠 正成(2)/4後醍醐天皇/5新田義貞/6足利尊氏/7佐々木道誉/8高師直/9観応の擾乱―室町幕府の内紛/10「飢人身を投ぐる事」/11内裏と幕府
第3章 『太平記』の諸相
1『太平記』の成立と作者/2『太平記』の思想/3『太平記』と『神皇正統記』/4南朝君臣の怨霊/5「不思議」と未来記/6民間信仰と芸能/7落書の時代/8あぶれ者たち/9「太平記読み」/10『太平記』の終焉
133ページ 所要時間4:30
30年前の本。紙は完全に劣化して黄ばんでしまっている本棚の肥やし。折に触れて、所要時間1時間程度の流し読みは繰り返してきている。十分な時間をかけて読み込んだのは、今回が初めてか?
「1982年10月から1983年3月まで、半年間毎週45分の全25回の講義番組テキスト」。評価3は、「教科書の評価は難しい」の一言に尽きる。専門家の目から見れば、恐らくもう手に入らない<垂涎の書>だと思う。ただ、日々の読書の対象として読みこなすのは、それなりに大変で苦しい。読み通せたのは、やはり「太平記」の時代世界と、登場する人々の魅力であった。
「『太平記』は四〇巻の大作です。『平家物語』でも十二巻、軍記文学の中ではいうまでもなく、日本文学の歴史の中でもっとも大きな作品の一つです。何しろ半世紀にわたる内乱(*)を対象にした、登場人物の総数も2,200人という厖大な作品ですから、云々」
(*)文保2年(1318)の後醍醐天皇即位から、貞治6年(1367)室町幕府二代将軍足利義詮の死去、三代将軍足利義満就任と細川頼之管領就任までの半世紀間。
大学生の時、一念発起して、「中公文庫版・日本の歴史(全26巻)」の読破に挑戦したことがあり、1巻~20巻までで挫折した。その時、第9巻『南北朝の動乱』(佐藤進一)が、飛び抜けて面白かった記憶がある。とにかく「なんだこりゃ!」と、あまりの荒唐無稽・混沌ぶりにびっくりしたのだ。なんせ、軍事的にも政治的にも圧倒的に微弱・非力な南朝が短期間とはいえ、4回も京都を奪還したりするのだ。重ねて、「なんなんだこりや!」である。戦国や幕末が面白いのは当たり前だが、それ以外でこんなに面白い時代が日本史にあったというのは、ちょっとしたカルチャーショックだった。
ダメ押しは1991年NHK大河ドラマ「太平記」放送である。勿論、吉川英治『私本・太平記』(全8巻)で予習は万全である。まず、NHK制作陣の勇気ある決断を褒め称えたい。なんせ戦前だが、足利尊氏を少し前向きに評価した国務大臣が「逆臣を褒めるとは何事ぞ!」と簡単に、その首を飛ばされた歴史を持つ国である。当時俺は「よくぞやってくれた!」と賞讃していた。また、キヤストが最高に良かった! ある意味、これ以上は考えられない奇跡的なキャストだった。間違いなく歴代大河ドラマトップ3に入る出来栄え!だった。
当時、兄との関係がうまくいっていなかった俺にとっては、尊氏と直義の関係の変化は、もう気持ちが入り込んでしまって、作品世界に完全にのめり込んでしまった。そして、満足していた。直義役の高島政伸が、毒を飲まされ、瀕死の息の中で尊氏役の真田広之と抱き合って、「(それでこそ)兄上は、大将軍じゃ」と言ってこと切れる。残された尊氏が「弟を殺した―…、母上―…」と天に向かって叫ぶシーンには、もう言葉は要らない。そのシーンを只管目に焼き付けていた。
すみません、本書の内容について、何も述べられてませんよね。とにかく、この書は、太平記関係では、垂涎の書ですよ。内容は、云々する以前の素晴らしい本です。
目次:
第1章 『太平記』の課題
1『太平記』の魅力―軍記文学の系譜/2『平家物語』と『太平記』/3『太平記』と史実/4『太平記』の構想
第2章 『太平記』の展開
1後醍醐天皇と護良親王/2楠 正成(1)/3楠 正成(2)/4後醍醐天皇/5新田義貞/6足利尊氏/7佐々木道誉/8高師直/9観応の擾乱―室町幕府の内紛/10「飢人身を投ぐる事」/11内裏と幕府
第3章 『太平記』の諸相
1『太平記』の成立と作者/2『太平記』の思想/3『太平記』と『神皇正統記』/4南朝君臣の怨霊/5「不思議」と未来記/6民間信仰と芸能/7落書の時代/8あぶれ者たち/9「太平記読み」/10『太平記』の終焉