4月7日(金):
211ページ 所要時間 4:50 ブックオフ108円
著者?歳。北海道生まれ。早稲田大学講師。専門はドイツ文学・西洋文化史
大した内容でないようなのに、思わず昔の世界史の教科書を引っ張り出して「ああそうそう、忘れかけてた。そうだったよな。」と中身を確認させられた。さらには、読書の途中で、録画してあったNHK-BSザ・プロファイラー「女帝マリア・テレジア」を最後まで観てしまう始末。正直読書としては、これしきの本に4h50mも費やしてしまい、なかなか進まないページにいら立ちを隠せなかったが、一方で内容を味わい、面白がって楽しんでしまっているのを認めざるを得なかった。
「やっぱりハプスブルク家ってすごいよな」「ハプスブルク家を理解せずしてヨーロッパ史は分からない」と思った。本書を読むことは、日本の徳川氏300年よりもはるかに長い
650年の歴史を誇る神聖ローマ帝国皇帝かつオーストリア国王のハプスブルク家(鎌倉時代の元寇頃~WARⅠまで)を「エピソードで振り返る旅」だった。
いつの時代もそうかもしれないが、世界の頂点にいる、それも家柄として偶然大きな権力をもった権力者の連中ってのも実際にはその権力や勢力を維持するために汲々としていて、よほどの例外を除けば、あまり幸せな人生を送った奴は少なかったようだ、という当たり前の真理を再確認した感じだ。だからと言って、俺にはその権力者たちに同情するほどお人好しなメンタリティは全くない!。民衆の生活の方が悲惨なのはもっと当たり前な事実なのだから!
本書の読者に求められる、本書を面白がって楽しめるかどうかのハードルはけっこう高いレベルだと思う。最低でも神聖ローマ帝国皇帝のハプスブルク家に、オーストリア=ハプスブルク家とスペイン=ハプスブルク家があったことぐらいは知っていることが求められる。さらに、ハプスブルク家とローマ=カトリック教会の腐れ縁、三十年戦争、スペイン継承戦争、オーストリア継承戦争などの言葉にある程度反応したり、感慨を覚えることができないとなかなか本書を楽しめないだろう。
その上で、七選帝侯、カール5世(カルロス1世)、宗教改革、フェリペ2世、ヘンリー8世の娘メアリーとエリザベス1世、アルマダの海戦、マリア・テレジア、フリードリヒ2世(英傑だが強烈な女性蔑視者!)のシュレジェン占領、外交革命、ルイ16世とマリー・アントワネット、
「戦争は他の者にまかせておくがいい。幸いなるかなオーストリアよ、汝は結婚すべし!」、
極端な鷲鼻と受け口と多産な女性家系という特徴を、究極の
近親相姦を繰り返しながら「
高貴な青い血の純潔」を維持していく。
著者は、特に「フェリペ2世」がお気に入りのようだが、俺は個人的には、
ライヒシュタット公の7,8歳の肖像画に心魅かれた。彼こそは、ローマ王と呼ばれた子供であった。21歳という若さで肺結核で逝った
彼の遺体は巡り巡ってパリのアンバリッドで偉大な父とともに眠っている。さて、わかるかな?! 分かるよね!
振り返れば、ページ数は少ないが、
本書を楽しむためには相当な歴史的教養が前提として求められる。センター試験「世界史B」なら最低でも80点以上ぐらい取れる歴史知識がないと厳しいだろう。
本書は、読者を選ぶ、または読者に要求する書物だと言えるだろう。
たくさん絵画の名品が出てるから簡単な本だと思って手にしたなら、とんでもない本である。それらの絵画の名品の背後にある歴史をじっくりと味わう本なのだ。
ちなみに、手塚治虫の漫画「リボンの騎士」シルバーランドのサファイア姫のモデルは、俺にはマリア・テレジアに思えて仕方がない。
【目次】アルブレヒト・デューラー『マクシミリアン一世』/フランシスコ・プラディーリャ『狂女フアナ』/ティツィアーノ・ヴィチェリオ『カール五世騎馬像』/ティツィアーノ・ヴィチェリオ『軍服姿のフェリペ皇太子』/エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』/ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』/ジュゼッペ・アルチンボルド『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』/アドルフ・メンツェル『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』/エリザベート・ヴィジェ=ルブラン『マリー・アントワネットと子どもたち』/トーマス・ローレンス『ローマ王(ライヒシュタット公)』/フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター『エリザベート皇后』/エドゥアール・マネ『マクシミリアンの処刑』
【内容情報】
スイスの一豪族から大出世、列強のパワーバランスによって偶然ころがりこんだ神聖ローマ帝国皇帝の地位をバネに、以後、約六五〇年にわたり王朝として長命を保ったハプスブルク家。常にヨーロッパ史の中心に身を置きながら、歴史の荒波に翻弄され、その家系を生きる人間たちの運命は激しく揺さぶられ続けた。血の争いに明け暮れた皇帝、一途に愛を貫いた王妃、政治を顧みず錬金術にはまった王、母に見捨てられた英雄の息子、そして異国の地でギロチンにかけられた王妃ー。過酷な運命と立ち向かい、また定めのまま従容と散っていったヒーロー、ヒロインたちは、どこまでも魅力的。彼らを描いた名画に寄り沿い、その波瀾万丈の物語をつむぐ。