4月4日(火):
398ページ 所要時間2:00 ブックオフ108円
著者30歳(1977生まれ)。東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。
著者の本は、ブックオフなどで見つけるとほとんど無条件で反射的に買ってしまう。
読書習慣復活を目指して、1ページ15秒のルールで最後まで眺め切った。何か、道を歩いていて目に飛び込んでくる風景や点景を眺めながら進んでいくような気分だった。当然、細かな事柄は記憶に残りにくいが、全体としてどのようなことが起こっていて、著者がどういうスタンスでどういうことを感じ、考えているのかはわかった。そして、
とりあえずは、それで十分ということにして、少しでも接することのできる本の数を増やしていきたいと思っている。
著者は、国内外で見捨てられたり、
底辺、それも最底辺にあえぐ人々に素のままで接して関わって、その知りえた現実・事実を世間に問い直すのが作風の一つになっている。著者によって示される現実の厳しさは、たいていの場合、我々が「これは大体この程度だろう」と高をくくっているレベルをはるかに超えている。
著者は、学者ではないし、事前に下調べをしっかりとしていくよりも
若さに任せてその世界に飛び込んで実態を抉り出す作風である。著者に対して「
壮大な<もの好き>」という印象を俺は持っている。そして著者の文章は、理屈よりも目前の事実を知らせることに重点を置いているせいか、
とても読みやすい。頭に流れ込んできやすいのだ。今まで読んでみてあまり失敗がない。
世界で3人に1人がムスリム(イスラム教徒)になる時代を目前にして、ムスリムに対して強い関心がある。
ムスリムと言えば、厳しい「戒律」のイメージが先走る。隣・近所のムスリムとどうやって我々異教徒は付き合えばよいのか。豚肉・アルコールのタブーは有名だが、例えば、ゲイや同性愛は死刑である。でも考えてみれば、北アフリカ・中東から中央・南アジア、東南アジアのムスリム・ベルトともいうべき国々は、一部のオイルマネーで潤った金満国を除けば、開発独裁国家崩れの政情不安定・紛争地帯、貧富の差が大きな貧しい途上国があり、途中にヒンドゥー教のインド、仏教のミャンマー・タイなど異教徒の国とも混在している。
ムスリムだから「戒律」に忠実で、立派な、シャキッとした人たちであるはずだ、というイメージがどうしようもなく現実のイスラム世界のあり方とズレているのは、明らかだ。しかし、そのイメージのズレを説明せよと言われると途端に困ってしまう。多数派として異教徒とどう接するのか。少数派として多数派の異教徒とどう接するのか。「貧困者」として、「女性」として、天涯孤独な「子どもたち」として、「路上生活者」として、「LGBT」として、「戦争被災者・難民」として、弱者・マイノリティとされる人々に対して、イスラムの社会の最底辺でどんな現実が展開しているのか。いかに絶望的な現実が、見過ごし、見捨てられているのか。それは「イスラム教」自体と直接関係しているかもしれないし、関係していないかもしれないが、彼らに目を凝らす旅人として著者は最も醜く弱い部分をさらけ出して伝えてくれる。
遠い世界の現実ではない。日本だって
少し油断すれば、悲惨な状況に置かれる人々が急増するはずだし、
すでに子供や弱者の貧困は先進国中で最低のレベルだ。「
美しくない国 日本」の未来図としても参考にしてしまった。
【目次】第1章 街娼たちの渇愛―インドネシア/パキスタン(夜会/ 婆/ 兄弟の秘め事/ 禁じられた舞踊)/ 第2章 異境を流れる者―ヨルダン/レバノン/マレーシア(月の谷の女/ 死海の占い師/ 堕天使)/ 第3章 家族の揺らぎ―バングラデシュ/イラン/ミャンマー(人さらい/ 砂漠の花嫁/ 問わず語り)/ 第4章 掟と死―パキスタン/アフガニスタン/インド(銃声の子/ 花の都の裏切り者/ 切除/ 水の祈り)/ 第5章 路上の絆―バングラデシュ(浮浪児の渇き/ 幼ない乳)
【内容紹介】
イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう―。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。