Alicyclobacillus (アリサイクロバチルス)属細菌は、グラム陽性、好熱性( 20-70℃で生育可能:至適45-65℃)、好酸性(pH2-6で生育可能:至適pH3.5-5.0)、好気性の有胞子細菌です。土壌を主たる生息域としますが、一部の菌種( A. acidoterrestris :アシドテレストリス)が原料やラインの二次汚染から酸性飲料等に持ち込まれ、生育すると、薬品臭(グアイアコール:正露丸のような臭い)を発生するため、飲料製造上の有害菌として問題視されています。近年、この菌の検査法が(社)日本果汁協会により開発されましたが、4-12日間の増菌培養を介さなくては検出が難しいため、企業に負担を強いているのが現状です。最終鑑別法には、生育温度差に基づく方法(所要時間:20時間)とグアイアコールの検出(所要時間:3-24時間)に基づく方法がありますが、前者は人為差が生じ、後者は菌種の特定ができないのが難点です。 http://genome.e-mp.jp/seminar/20060624/interview1.html
【Alicyclobacillus 属関連資料】
1982年に、無菌充填された透明リンゴ果汁飲料が製品の保存・流通時に異臭と濁りを伴って変敗するといった事故が西ドイツで起こった。これは、現在、アリサイクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)(以下、A. acidoterrestrisとも記載する)として知られている細菌が市販の飲料で引き起こした初めての変敗事例である(Cerny et al., 1984)。その後、アメリカ、オーストラリア、ブラジルなど、様々な国でこの細菌に関する報告がされてきている。日本では1991年に丹羽らによって報告された輸入透明リンゴ果汁から分離された耐熱性好酸性菌(後に新種A. maliとして報告されている)を皮切りに(丹羽ら、1991)、アリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌による変敗、分離、制御、検出などに関する報告が幾つかされてきている。1990年代後半までは、それほどAlicyclobacillus属細菌が問題視されることは多くなかったが、近年、特に日本を中心としてAlicyclobacillus属細菌による汚染の問題がクローズアップされてきている。その理由としては諸説有るが、少なくとも検査法や分析技術の向上によりAlicyclobacillus属細菌の汚染が表面化してきたこと、およびこれまで以上に安全な製品を提供したいといった意識の高まりによるものであることは間違いのないことである。このような背景のもと、食品、特に飲料メーカーを中心としてAlicyclobacillus属細菌対策に着手してきており、各社の汚染事故防止に効果を挙げてきている。
しかしながら、業界としてみれば相変わらずAlicyclobacillus属細菌に悩まされており、一刻も早い汚染防止策の確立が待ち望まれている。また、ここ数年の内にAlicyclobacillus属細菌に関する情報が多数蓄積され、変敗の主原因である異臭(グアイアコール)を産生する菌種がアリサイクロバチルス・アシドフィルス(A. acidiphilus)、A. acidoterrestrisおよびアリサイクロバチルス・ハーバリウス(A. herbarius)であることが分かってきている。しかしながら、A. acidiphilusやA. herbariusが分離されることは極めて稀で、従って食品業界に於けるターゲット菌種はA. acidoterrestrisであるとされている。
Alicyclobacillus属細菌は温度域20~70℃(至適生育温度:40~60℃)、pH域2~6(至適生育pH3.5~4.5)で生育することができ、また微量の酸素でも生育することができる(絶対好気性)。しかしながら、これら以外の性状に関しては、非常に菌種レベルあるいは菌株レベルで性状が異なり、種レベルでの共通性状を見いだすことは難しく(多くのバラエティーが存在する)、それぞれの菌種を同定するためには遺伝子レベルの解析が不可欠である。このようなバラエティーの多さは本属細菌を同定することが難しいことを如実に物語っている。
他方、Alicyclobacillus属細菌は土壌を主な生息域としているが、二次汚染的に果実、液糖、ハーブなどから分離されてきている。分離される頻度としてはA. acidocaldariusとアリサイクロバチルス・ゲノミック・スピーシーズ(Alicyclobacillus genomic species)が最も多く、次いでA. acidoterrestrisで、その他は極めて低い頻度である。しかしながら、上記三種をはじめとしてAlicyclobacillus属細菌の生息域は基本的に同じと考えられており、従ってターゲット菌種であるA. acidoterrestrisをその他のAlicyclobacillus属細菌と見分ける方法が不可欠である。
このような背景のもと、下記の特許文献1には、16S rDNA塩基配列の部分領域を用いてAlicyclobacillus属細菌を同定する手法が記載されている。本手法では、Alicyclobacillus属細菌の部分16S rDNA塩基配列を決定し、データベースとの相同性検索によって菌種を決定する。しかしながら、本手法は幅広い細菌に応用することを目的としているため、結果を得るために数日要し、また高額かつ特殊な機械を必要とするため、迅速性が求められる品質管理の現場では活用が難しいのが現状である。出典:特許公開2005-46035 (三井農林株式会社&海洋バイオテクノロジー研究所)
【Alicyclobacillus 属関連資料】
1982年に、無菌充填された透明リンゴ果汁飲料が製品の保存・流通時に異臭と濁りを伴って変敗するといった事故が西ドイツで起こった。これは、現在、アリサイクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)(以下、A. acidoterrestrisとも記載する)として知られている細菌が市販の飲料で引き起こした初めての変敗事例である(Cerny et al., 1984)。その後、アメリカ、オーストラリア、ブラジルなど、様々な国でこの細菌に関する報告がされてきている。日本では1991年に丹羽らによって報告された輸入透明リンゴ果汁から分離された耐熱性好酸性菌(後に新種A. maliとして報告されている)を皮切りに(丹羽ら、1991)、アリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌による変敗、分離、制御、検出などに関する報告が幾つかされてきている。1990年代後半までは、それほどAlicyclobacillus属細菌が問題視されることは多くなかったが、近年、特に日本を中心としてAlicyclobacillus属細菌による汚染の問題がクローズアップされてきている。その理由としては諸説有るが、少なくとも検査法や分析技術の向上によりAlicyclobacillus属細菌の汚染が表面化してきたこと、およびこれまで以上に安全な製品を提供したいといった意識の高まりによるものであることは間違いのないことである。このような背景のもと、食品、特に飲料メーカーを中心としてAlicyclobacillus属細菌対策に着手してきており、各社の汚染事故防止に効果を挙げてきている。
しかしながら、業界としてみれば相変わらずAlicyclobacillus属細菌に悩まされており、一刻も早い汚染防止策の確立が待ち望まれている。また、ここ数年の内にAlicyclobacillus属細菌に関する情報が多数蓄積され、変敗の主原因である異臭(グアイアコール)を産生する菌種がアリサイクロバチルス・アシドフィルス(A. acidiphilus)、A. acidoterrestrisおよびアリサイクロバチルス・ハーバリウス(A. herbarius)であることが分かってきている。しかしながら、A. acidiphilusやA. herbariusが分離されることは極めて稀で、従って食品業界に於けるターゲット菌種はA. acidoterrestrisであるとされている。
Alicyclobacillus属細菌は温度域20~70℃(至適生育温度:40~60℃)、pH域2~6(至適生育pH3.5~4.5)で生育することができ、また微量の酸素でも生育することができる(絶対好気性)。しかしながら、これら以外の性状に関しては、非常に菌種レベルあるいは菌株レベルで性状が異なり、種レベルでの共通性状を見いだすことは難しく(多くのバラエティーが存在する)、それぞれの菌種を同定するためには遺伝子レベルの解析が不可欠である。このようなバラエティーの多さは本属細菌を同定することが難しいことを如実に物語っている。
他方、Alicyclobacillus属細菌は土壌を主な生息域としているが、二次汚染的に果実、液糖、ハーブなどから分離されてきている。分離される頻度としてはA. acidocaldariusとアリサイクロバチルス・ゲノミック・スピーシーズ(Alicyclobacillus genomic species)が最も多く、次いでA. acidoterrestrisで、その他は極めて低い頻度である。しかしながら、上記三種をはじめとしてAlicyclobacillus属細菌の生息域は基本的に同じと考えられており、従ってターゲット菌種であるA. acidoterrestrisをその他のAlicyclobacillus属細菌と見分ける方法が不可欠である。
このような背景のもと、下記の特許文献1には、16S rDNA塩基配列の部分領域を用いてAlicyclobacillus属細菌を同定する手法が記載されている。本手法では、Alicyclobacillus属細菌の部分16S rDNA塩基配列を決定し、データベースとの相同性検索によって菌種を決定する。しかしながら、本手法は幅広い細菌に応用することを目的としているため、結果を得るために数日要し、また高額かつ特殊な機械を必要とするため、迅速性が求められる品質管理の現場では活用が難しいのが現状である。出典:特許公開2005-46035 (三井農林株式会社&海洋バイオテクノロジー研究所)