Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

オレーグ・ヤンコフスキー追悼

2009-05-25 23:09:23 | cinema
オレーグ・ヤンコフスキー追悼

インタファクス通信によると、ロシア俳優のオレグ・ヤンコフスキー氏が20日(5月)、モスクワの病院で死去、65歳。すい臓がんを患っていたという。44年2月、旧ソ連カザフスタン生まれ。


オレーグの出演作はタルコフスキーの『鏡』『ノスタルジア』のみ観ているが、とくに『ノスタルジア』によって忘れえぬ俳優である。

タルコフスキーにとって終生のテーマの一つであった「憂愁の病」と「魂の救済」。その総括として堂々たる作品となった『ノスタルジア』では、オレーグは同郷の音楽家サスノフスキーの足取りを追いイタリアを巡るロシア詩人として登場する。彼の抑制された演技ともいえぬ独特の存在感は、映画の主題をすぐれて体現して見事である。無表情で主にわずかなしぐさにより、サスノフスキーの陥った故国への思いに深く同調し、死に至る病に落ちてゆく詩人の心の動きを表し深めていく。その同じ無表情で、通訳もなしに深部で心を通じ合わせるドメニコとの約束を命を賭けて果たそうとする最後のシークエンスでのうちに秘めた緊張感はやはり忘れ得ない。(写真)

やはり故人となっているアナトーリ・ソロニーツィンとともに、タルコフスキー役者として重要な位置を占めたと思う。この1作で。

『ノスタルジア』のドメニコは当初ソロニーツィンを想定していたという話なので、実現していれば二大タルコ俳優の競演が観られたのだが。(『鏡』でも競演しているが、両者が出会い会話することはない。)



他の出演作では『クロイツェル・ソナタ』(1987ソ連)、『私の20世紀』(1989ハンガリー・西ドイツ)、『おろしや国酔夢譚』(1992日本)、『耳に残るは君の歌声』(2000イギリス/フランス)などがある。いずれも未見だが、才媛サリー・ポッターによる『耳に~』は観てみたい。ジョニー・デップなど豪華陣との競演である。また、『私の20世紀』は評などを読むとかなり面白そうだ。監督がハンガリー人というところも気になるし。

1944年は第二次大戦のさなか。ノルマンディ上陸作戦の年である。ジョン・レノンより4歳若く、ジョージ・ルーカス、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジと同じ年である。リヒャルト・ゾルゲ、エドゥアルド・ムンクの没年でもある(だからなんだ?)

R.I.P.
深い感謝とともに


ノスタルジア

ノスタルジア再観
コメント (4)
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