原作を読んだ時から、是非とも観たいと思ってた映画。
良い原作であればあるほど、読後に強いものが心に残れば残るほど、映像化されるとガッカリしてしまうのが人の世の常。
若干引き気味姿勢から観始めたけど、そんな負方向の期待は見事に裏切られた。
希和子を主人公に置いたパートと恵理菜が主人公のパート、原作では前半後半に分かれるのだけど、映画では交互に映し出されていた。
これが意外によかった。
希和子と恵理菜のストーリーの波が重なって、それぞれが同じペースで盛り上がっていくんだよ。
映画は時間に制限のあるものだから、私が印象強く感じたシーン(逃亡当初のとみこさんちでの生活とか)が削られていたりショボーン。
更にはもっと時間制限のあるTV放映であるゆえに、映画から削られたシーンも放送時間的に見て多そうでやっぱりショボーン。
その結果、とてもトントンと希和子と薫の逃亡生活が続いてしまい、現実味が薄れてしまったかなぁ。
DVD借りてきて観ないとなー。
永作、井上、小池、渡辺の女優陣がまた素晴らしい。
脚本の一部とカットの残念さを凌駕して有り余る余韻を残してくれた。
永作は分かっていたけど、井上、更には小池の演技に感嘆。
確か“屈折していて、とことんいい人で、猫背”だったか、図々しいのに弱弱しい女性を見事に演じていた。
そういうのって理屈では分かるけど、演技として把握するのは難しかったろう。
彼女がこんなに実力のある女優さんとは思わなかったよ。
希和子と薫の別れのシーンにおける子役の渡辺の演技が、もう、ね・・・!
「ママ・・・来て」「行って」の切ない遣り取りの後、とぼとぼ歩く後ろ姿がね・・・!
思い出しても涙ズルズル。
薫以外の登場人物達の自分勝手さには、映像で見せられると不愉快さも強く感じるなぁ。
誘拐をする希和子もだし、恵津子の八つ当たりもだし、二人の男の“大人げなく性欲に振り回されてるだけじゃん”感もだし。
でも、やっぱり瀬戸内の小さな町や綺麗な海のシーンやそこに暮らす希和子と薫の刹那の幸せの描写は本当に美しくて、やっぱりやっぱりこの擬似親子が少しでも長く一緒にいられるようにと願ってしまう。
ラスト、現在の希和子を画面に出さなかったのは良い演出。
田中泯の登場シーンは短いのに、なんだあの存在感。
録画してあるので、また観よう。
DVDもそのうち借りよう。