今年も豪雨の災害が熊本県球磨川で発生してしまいました。コロナウイルス感染とダブルパンチの心配が現実になりました。被災者には本当に気の毒で、お慰めの言葉もありません。テレビの放送で、「こんなことは生まれて初めて」と被災者は肩を落としていました。洪水危険地区に住む私にも、他人事とは言えません。
日本三急流の一つの球磨川は、毎年のように洪水が発生しているようですが、被害地域は同地区ではないように思います。被害地の堤防は強化されると、異なる場所の堤防が弱体化し、「生まれて初めて」が繰り返されているような気がします。球磨川全体の抜本的治水対策を一気に施す必要があるのでしょうが、財政的にもそれは不可能で、今のような切りはぎ工事にならざるを得ないのです。危険地域の建造物建設を禁止することも出来ませんし、手を拱いているしかないのでしょうか。
大学で中国人の院生の卒論指導で、当時建設中の中国の三峡ダムを取り上げたことがあります。洪水制御・発電・用水開発を目的に、巨大河川長江をせき止めて巨大ダムを建設したのです。多くの専門家の反対を押し切って建設した中国共産党の蛮行です。農業土木の私が考えても無謀なダムで、大量の流砂で10年余りで堆砂でダムは埋まってしまうと警告されていたのです。完成から11年経ちますが、案の定ダムは滞砂で埋め尽くされ、ダムとしての命運は既に尽き、今年にも崩壊しても言い過ぎではないのです。崩壊すれば巨大洪水が発生し、下流の上海市街も飲み込まれてしまうと危惧されています。
洪水時は水を恐れ、干ばつに遭うと有り難がり、水は多様な顔を有しています。科学技術の発展で人類は自然の脅威を克服したというのは、現代人の驕りではないでしょうか。「水と共に生きる」と素直に考えて安全な場所に住んでいればよいものを、技術の粋を尽くして危険地域に居住地を拡げた結果の洪水災害なのです。
マレーシア東海岸の低平地、10万㌶の水田地帯では、農民は高床式の住宅に住んでいます。時間雨量150ミリという豪雨を経験したことがありますが、堤防がありませんので、全体の水位が15㎝増えるだけで、洪水はありません。トイレは水路上に張り出して設けられています。便が水路に落ちると、ゴンズイというナマズの仲間のようなひげのある魚がわっと湧き出し、あっという間に便を食べてしまいます。垂れ流しですが、不潔感はありません。その魚は、農民の重要なタンパク源となります。彼らは「水と生きる」達人と思いました。
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